I.アルベニス

【アルベニスについて】
(Isaac Albeniz(1860-1909)は、グラナドス、ファリャ等とならびスペイン近代を代表する作曲家です。ピアノの名手でもあった彼は、20歳頃から広く演奏旅行を行い、自分のレパートリーとして多くのピアノ曲を書きました。スペイン音楽は音楽民族であるジプシーや、一時イベリア半島を征服していたアラビア王朝の音楽など、非ヨーロッパ的音楽の影響が強く、独特の個性と魅力に満ちています。アルベニスはこの強いスペイン臭をそのまま「ピアノ」に置き直すことにより、その頃ヨーロッパを風靡していた、ナショナリズム=エキゾチシズムの流れに強いアピールを行った事になりました。その結果、アルベニス自身の名演奏とあいまって、蠱惑的なスペイン音楽にヨーロッパ中が目を向けるきっかけを作ったと云うことも出来ると思います。

【「エスパニャ」組曲】
6曲の小品からなる組曲で、有名なニ長調の「タンゴ」や「マラゲーニャ」などが含まれています。アルベニスは、この組曲の他に「スペイン組曲」「スペインの歌」「イベリア」等ピアノの名曲を多く残しています。この「エスパーニャ」組曲は、彼の中期の傑作として高く評価されているものですが、しかし「イベリア」等に比べて演奏技巧は平易で、素人にも充分弾ける曲集です。

1)プレリュード
幻想的で、郷愁に満ちた雰囲気を持つ美しい前奏曲です。途中のギターのようなトレモロはいかにもデリケートです。

2)タンゴ
夢見るようなロマンティックなタンゴ。この組曲のなかでも特に有名で、この曲だけ独立して演奏されることもよくあります。

3)マラゲーニャ
前曲「タンゴ」と並んで有名な曲です。3拍子の活発な部分にはさまれて穏やかな唄が流れます。エンディング2小節のフリギア終止は特に美しい。

4)セレナータ
やるせない気持ちがいっぱいのセレナータ。セレナータ(セレナード)が、本来夜に窓辺で歌われる恋の唄である事がよくわかります。

5)カタローニャ風カプリッチォ
淡い水彩画のようなトーンを持った曲で、優しく、何度聞いても飽きないメロディが淡々と繰り返されます。

6)ソルツィーコ
5/8拍子の、リズミカルな舞曲です。変拍子といえども全曲3/8+2/8で統一されており、不規則な感じはなく滑らかです。

 


【組曲「スペインの歌」】
I組曲「スペインの歌」は全5曲で成り立っていています。前掲の「エスパーニャ」組曲よりは、若干演奏技巧が難しく、しかし「イベリア」組曲ほどではなく、素人ピアニストの恰好の素材です。但し、平易な演奏技巧にもかかわらず、品位の高い傑作で演奏会でもよく取り上げられます。ここでは、3曲を取り上げましたので、以下各曲について簡単に説明します。

1)プレリュード
「エスパーニャ」の中の二長調のタンゴと並んでアルベニスの作品の中でも最も有名な曲です。ギターでも良く弾かれますが、ピアノが原曲です。しかし、ピアノで弾くとたいへん難しいパッセージです。なお、この曲は別名「アストゥーリアス」としても知られます。これは、別の出版社が「スペイン舞曲集」と云う名の曲集を出版したときに、勝手に改題してそこに加えたもので、「スペイン舞曲集(第1集)」の曲を指す場合は、「アストゥーリアス」と呼ぶこともあります。

2)椰子の木陰で
TVのCFにも使われていたので聞き憶えの方もあると思います。南国風の甘いメロディです。

3)コルドバ
ノスタルジックな雰囲気を醸し出す、美しい曲です。「椰子の葉陰にジャスミンの香り漂うたそがれ時」古い寺院からの賛美歌が聞こえてきます。曲は途中で華やかに盛り上がりますが、やがて再び賛美歌が聞こえ夕闇に消えて行きます。壮麗な宮殿を残して去っていった高貴なアラビア王朝へのノスタルジーが強く感じられます。