| エリーゼの為に | L.Beethoven | ソナチネ | W.L.Gillock |
| 雪の日のソリのベル | W.L.Gillock | 人形の夢と目覚め | T.Oesten |
| 野バラに | E.MacDowell | 睡蓮に | E.MacDowell |
| 花の歌 | G.Lange | 乙女の祈り | Badarzewska |
| クシコスの郵便馬車 | H.Necke | 紡ぎ歌 | A.Elmenreich |
| ト長調のメヌエット | L.Beethoven | 熊蜂の飛行 | Rimsky-Korsakov |
| ジムノペディ第1番 | E.Satie | 月光の曲 | L.Beethoven |
| ハープシコード協奏曲第5番より | J.S.Bach | エコセーズ変ホ長調 | L.Beethoven |
| 無言歌変イ長調 op.17-3 | G.Fauré | Scarf Dance(Pas des écharpes) | C.Chaminade |
| 組曲 ト長調 | H.Purcell | シルエット 変ニ長調 | A.Dvorak |
| トルコ行進曲 | W.A.Mozart | G線上のアリア(ピアノ編曲) | J.S.Bach |
| さらばピアノよ | L.Beethoven(?) | アヴェ・マリア(ピアノ編曲) | G.Caccini |
| すみれ | L.Streabbog | 子供の謝肉祭 | L.Streabbog |
| オーボエ協奏曲より | A.Marcello | 朧月夜 | 文部省唱歌 |
| 故郷 | 文部省唱歌 | 五木の子守歌 | 日本民謡 |
| 主よ人の望みの喜びよ | J.S.Bach | Je te veux | E.Satie |
| フィガロの結婚より「失くしてしまった」 | W.A.Mozart | シチリアーノ(ピアノ編曲) | J.S.Bach |
| 愛のロマンス〜「禁じられた遊び」 | Traditional | グノシエンヌ1番 | E.Satie |
| 汝を愛す(ピアノ編曲) | Beethoven | 「コラール」〜Anna Magdalena | J.S.Bach |
| 「アリア」〜Anna Magdalena | Bach(?) | 「メヌエット」〜Anna Magdalena | J.S.Bach(?) |
| 精霊の踊り | C.Gluck | 「ポロネーズ」〜Anna Magdalena | J.A.Hasse |
| 「椰子の実」 | 大中寅二 | シャボン玉 | 中山晋平 |
| 波浮の港 | 中山晋平 | 雨 | 弘田竜太郎 |
| メヌエット | L.Boccherini | 小さなプレリュード | E.Satie |
| 子守唄 | E.Satie | ソナチネ作品168-1 | A.Diabelli |
| わすれな草 | H.Lichner | 揺りかごの歌 | 草川信 |
| 夕焼け小焼け | 草川信 | 愛しのクレメンタイン | アメリカ民謡 |
| アメージング・グレース | 讃美歌 | When I grow too old to dream | S.Romberg |
| インドの歌 | Rimsky-Korsakov | 春の歌 | 草川信 |
| アメージング・グレース | 讃美歌 | When I grow too old to dream | S.Romberg |
| 花 | 瀧廉太郎 | 荒城の月 | 瀧廉太郎 |
| 紅葉 | 文部省唱歌 | 虫の声 | 文部省唱歌 |
なぜこの曲がこんなに人気があるのか、私にはよく分かりませんが、とにかく初級者向けのピアノ小品としては昔から人気絶大を誇る1曲です。作品番号はありませんが、手元の資料では1810年作曲となっていますから、ベートーヴェン40歳の頃の作品と云うことになります。この頃は彼の作曲活動の最盛期で、交響曲第5番『運命』、第6番『田園』、ピアノ協奏曲第5番『皇帝』、など大作が目白押しです。従って、ちょっと不思議な気もするのですが、ベートーヴェンが、知り合いの子供のために書いてやったのでしょうか、或いは、バガテル集からは選出漏れした小曲を出版社がめざとく見つけて『落ち穂拾い』のつもりで出版したのでしょうか。

【さらばピアノよ】
昔からベートーヴェンの作品とされてきましたが、作品番号もなく、詳細は分かっていません。おそらく偽作であろうということになっています。ただ、「エリ−ゼのために」などと比べても、大変弾きやすく、バイエル程度で充分こなすことが出来ますし、又、思わせぶりな題名が着いていることもあって、初級用のレパートリーとしては人気の曲で、スタンダード・ナンバーの位置を占めています。
【ベートーヴェン:ト長調のメヌエット】
1796年に出版された「ピアノの為の6つのメヌエット」中2曲目に当たる曲です。もともとはオーケストラ用であったのではないかと云われています。現在でもヴァイオリン等で奏されることもあり、「ベートーヴェンのメヌエット」と云えばこの曲、という風に広く知られています。
【ベートーヴェン:月光の曲】
ベートーヴェンには32曲のピアノソナタが残されています。その中のいくつかは、あだ名があって「恋人〜4番」「悲愴〜8番」「月光〜14番」「田園〜15番」「テンペスト〜17番」・・・等と呼ばれます。「月光の曲」はこの第14番ソナタの第1楽章を指します。
レルシュタープと云う人がこの曲を、スイスのルツェルン湖に写る月のようだ、と云ったとかでこのあだ名が付いたようですが、真偽のほどは知りません。とにかく「月光」と云うイメージは、ベートーヴェン自身には何の関係もないものです。曲の感じも、私自身は「月光」から連想されるロマンティックなものとは遠く、もっと暗いものに受け取れます。第1楽章はテーマの音型や拍子、テンポ、から見て「葬送行進曲」と捉える人が最も多いようです。ドビュッシーの「月の光」やシューマンの「月夜」フォーレの「月の光」(双方とも歌曲)等の「月」とは異なって、どこか厳としたものが感じられるわけです。
冒頭の左手に出てくる下降音型が全曲(2楽章、3楽章も)を支配する基本モチーフとなっており、これがこのソナタの持つ「暗さ」の源をなしているのかも知れません。
なお、楽譜冒頭に[sempre pp e senza sordini]の指示が見えますが(英語に直すと、[always pp and without sordinos]と云うような感じです)、このsordiniは現在一般に[sordino]の語が指し示す「弱音器〜左のペダル」の意味ではなく、右のペダルで操作するダンパーの事です。ダンパーとは文字通りでは「減衰させるもの」、つまり振動する弦にフェルトを押しつけて振動を止めてしまう(結果音が切れる)役目を果たします。
ピアノでは、右のペダルを踏めば、フェルトは弦から離れ、音は伸び、ペダルを離せば、フェルトが弦に押しつけられて音が止まると云う仕組みです。従って、ちょっとややこしいですが、[senza sordini]は弱音器なしでの意味ではなく、「ダンパーなしで」、つまり「フェルトを押しつけないで」と云う意味で、要するに早い話が右のペダルを使って弾きなさい、と云う意味です。弱音器〜左ペダル〜の方は、演奏者の判断で使用しても一向に構いません。
【ベートーヴェン:エコセーズ】
エコセーズはスコットランド発祥の舞曲で元来3拍子であると云われていますが、ヨーロッパでも広く流行し、18世紀には現在のような2拍子系に変化してしまっていたようです。シューベルトや、ショパンの初期の作品にも「エコセーズ」が見られますから、結構人気のある舞踏曲だったのでしょう。
ベートーヴェンのこの曲は、「エリーゼの為に」や「ト長調のメヌエット」と並んで、ベートーヴェンの「軽い」作品として良く知られています。この種の舞曲は、相当テンポの変化が激しく、リタルダンドやアッチェレランドを頻繁に繰り返します。上手いアゴーギク変化を使って踊りを盛り上げる、と云うような工夫をして弾くと自ずから体が動き出すような楽しい曲です。
【ベートーヴェン:「汝を愛す」】
作品123に含まれる、歌曲「汝を愛す」のピアノ編曲です。通常は歌い出しの歌詞「Ich
Liebe Dich」で呼ばれることが多いですが、本来の題名は「Zaltliche Liebe」となっています。
【ギロック:ソナチネ】
W.L.Gillock(1917〜1993)は、現代アメリカのピアノの先生です。ピアノを教えながらちょこちょこと小品を書き、いくつかの曲集が出版されています。《アメリカのピアノの先生》の作品らしく、『弾きやすく』かつ『分かりやすい』曲が多いので練習者に好まれるところがあって、結構な人気です。この「ソナチネ」は『子供のためのピアノ曲集』に含まれていますが、ソナチネと云う名称の割には、軽いポップス感覚があって、親しみやすい曲です。
【ギロック:雪の日のソリのベル】
同じく、『子供のためのピアノ曲集』に含まれています。サラサラと降る雪の中をソリが鈴を鳴らしながら駆け抜けて行くと云うような光景の、単純な描写音楽です。
【エステン:人形の夢と目覚め】
T.Oesten(1813〜1870)はドイツの作曲家&指揮者です。現在作品として知られているのは、この『人形〜』の他『アルプスの鐘』『アルプスの夕映え』など、初級向けのピアノ作品ばかりです。
この曲は描写音楽で、《子守歌〜最初の3拍子》→《眠る〜3拍子部分の終わり》→《夢見る〜4拍子》→《目覚める〜4拍子部分の終わり》→《踊る〜2拍子》と順に但し書きが付いています。で・・、何というか・・そのままです。
【マクダゥエル:野バラに(森のスケッチ)】
E.A.MacDowell(1861〜1908)はアイルランド系のアメリカ人で、作曲家でもありピアニストでもあります。クラシック音楽の伝統に欠けていたアメリカでは、数少ない本格派の作曲家として、高い地位を与えられ、今日、なお高く評価されている大物です。曲集『森のスケッチ〜Woodland Sketches』は、10曲からなる美しいピアノ小品集で、マクダゥエルの作品中では最もよく知られています。曲集『森のスケッチ〜Woodland
Sketches』は、10曲からなる美しいピアノ小品集で、マクダゥエルの作品中では最もよく知られています。『野バラに(To a Wild
Rose)』は、この曲集の冒頭の曲で大変良く知られ、歌詞まで付けられて歌われたりもします。
【マクダゥエル:睡蓮に(森のスケッチ)】
森のスケッチ中6曲目に位置する、これも美しい曲で良く知られています。マクダゥエルは27歳の時に留学先のドイツから帰国し、10年間ほどボストンに住んでいます。つまり、この《森〜》はアメリカ東北部の森林地帯の風景を描いたもので、アメリカ的な雰囲気も、一般に良く使われるニグロ的(ジャズ的)なものではなく、アメリカ・インディアン的なものを取り入れた結果です。この辺りがガーシュィン等のアメリカ的とは少し異なる雰囲気を醸し出していると思われます。

【ランゲ:花の歌】
G.Lange(1830〜1889)はドイツの作曲家&ピアニストです。このようなサロン風のピアノ小品がいくつか残っており、中でも『花の歌』は昔から初級用レパートリーの定番位置を占めています。同種の作品に比べて、適度にピアニスティックであるために好まれているようです。

【バダルツェウスカ:乙女の祈り】
T.Badarzewska(1838〜1862)は、若くして亡くなった(24歳)ポーランドの女流ピアニストである事以外、殆ど分かっていません。曲自体は若干退屈な変奏曲ですが、夭折した美人(かどうかは知りません)ピアニストの残した作品に、出版社が商魂たくましく『乙女の祈り』と名付けて出したために人気が出たのではないかと思われます。チェーホフの『三人姉妹』の終幕にこの曲が用いられて有名になったことも原因の一つでしょう。この曲の欠点は、とにかく、やたら繰り返しが多くダラダラ長い事です。私のデータは楽譜通り全部リピートしていますが、実際には全てリピートは省いてしまった方が良いかも知れません。元来は教会の鐘で演奏するために作られたとされており、曲頭も鐘の音で始まります。
【ネッケ:クシコスの郵便馬車】
H.Necke(1850〜1912)はドイツの作曲家&指揮者です。結構な数の作品を残したらしいですが、現在ではこの『クシコスの郵便馬車』が知られるだけです。聞けば分かるように、聞き慣れた民謡の旋律が使われ軽快な楽しい曲です。トリオに使われている旋律は、リストがハンガリー狂詩曲の第2番で使ったものと同じです。
【エルメンライヒ:紡ぎ歌】
A.Ellmenreich(1816〜1905)は、ドイツの俳優&詩人&作曲家と云う才人です。日本で云えば森繁久弥と云うところでしょうか(?)。オペラなど結構な作品を残したらしいですが、現在知られているのはこの『紡ぎ歌』だけです。ヨーロッパでは素人が結構作曲をしたようで、哲学者のルソーやニーチェ等も作品を残しています。
Nikolay
Andreybich
Rimsky-Korsakov(1844〜1908)はロシア5人組の中核をなす作曲家です。5人組の例に洩れず、元来軍人で本職の作曲家ではありませんでしたが、それは当時の貴族階級の子弟としてのお決まりの道を一旦辿っただけで、自らの音楽の才能を活かし結局はペテルブルグ音楽院の教授を務めるようになりました。彼の書いた管弦楽法などの教科書は現在でも使われるほどで、決して素人作曲家と云うわけではありません。又、彼の門下からはストラヴィンスキーなどの逸材を輩出しており、教師としても優秀であったことがわかります。ピアノ曲はあまり知られていませんが、交響組曲「シェラザード」やオペラ「金鶏」「サドコ」などオーケストラ作品で広く知られています。管弦楽法に長けていたために管弦楽編曲も多く、例えばムソルグスキーの交響詩「禿げ山の一夜」なども、現在演奏されるのはリムスキー・コルサコフの編曲によるものです。
●熊蜂の飛行
元来は、歌劇「サルタン皇帝の物語」中で演奏される曲で、魔法の島に流れ着いた王子が白鳥を熊蜂の来襲から守ってやる場面に使われます。速い半音階の連続で、結構な演奏効果があるので色々な楽器の独奏曲として独立して奏されることが多いようです。映画「シャイン」の中でのピアニスト役の俳優が、アカデミー賞の授賞式で見世物的にこれを弾いて喝采を浴びていました。
●インドの歌
歌劇「サドコ」に含まれるテノールのアリアですが、この曲だけで独立して演奏されることも多い大変有名な曲です。「サドコ」は主人公である吟遊詩人サドコをめぐる愛と冒険のロシア民話ですが、リムスキー=コルサコフのオペラによって世に広く知られるようになったものです。
E.Satie(1866〜1925)は、年齢的にドビュッシーとラヴェルの間に位置するフランスの作曲家ですが、両巨匠の間にあっては若干見劣りがして、ちょっと可愛そうな立場の作曲家です。近年、著作権保護期間満了とともに、商業ベースにのってサティが紹介されたので一般にも良く知られた存在となりました。サティが稼ぎ仕事として作曲していた流行歌の類も復活したりしています。
●ジムノペディー第1番
この「ジムノペディー第1番」も、その流れにあって、特にテレビCM等で流されたために、一躍ポピュラーになった曲の一つです。第1番の名称が示すとおり、元来は「3つのジムノペディ」としてサティが若い頃(22歳)に作った3曲セットの作品です。この内、1番と3番がドビュッシーによって管弦楽編曲されています。ジムノペディとは古代ギリシャの祭りの名称から採ったもので、サティは古代ギリシャの壺に描かれた祭りの絵を見て作曲したと云われています。この祭り自体は、曲が示すような瞑想的なものではありませんが、古代に思いを馳せる・・と云う意味で音楽は沈思的なものになっています。この辺りは、ドビュッシーの前奏曲集にある「デルフイの舞姫達」「カノープ」等と似た構えです。
●Je te
veux(あなたが欲しい)
サティは、生活のためにバー「黒猫」でピアノを弾き、又、稼ぎ仕事で流行歌のシャンソンを結構作曲しています。この「ジュ・トゥ・ヴ」はそれらの中で最も良く知られているものです。他に、ラグタイム風の「ピカディリ」なども良く知られており、TV番組のBGMなどで頻繁に聞かれます。
●グノシエンヌ1番
「グノシエンヌ」と云う題名の曲は、現在6曲が知られていますが、元来はこの1番を含む「3つのグノシエンヌ」として出版された3曲が知られており、残りの3曲は後に付け足されたり、発見されたりしたものです。「Gnossienne」の題名は、おそらくサティの造語で、古代宗教の一つであるグノーシス主義から採られたものとされています。この曲は、サティが万博で聞いたルーマニア民族音楽が影響しており、増2度音程を含む短音階や、頻繁に付けられる前打音など、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」と似かよった味わいを持っています。
《楽譜について》
サティはこの曲で楽譜上の小節線を省いてしまっており、大変読みにくくなっていますが、小節線の省略自体に音楽的必然性はなく、サティの若干マイナーな反逆精神のなせる結果だと思われます。従って、フレージング自体は伝統的な4/4又は2/2拍子で考えて頂いて問題ありません。
●絵画的子供らしさ(Enfantillages
Pittoresques)
サティは40才頃に何を思ったのか、突然子供の為のピアノ曲を書きますが、その中の一つがこの3曲からなる”Enfantillages
Pittoresques”です。曲は非常にシンプルで、バイエル中頃で弾けますが、ナイーヴなサティの感覚はよく現れており、充分な美しさを持っています。
第1曲:一日の小さなプレリュード
曲中に、子供が起きて、鏡に向かって髪を直し、散歩に出かける・・と云うような但し書きが付けてあります。シンプルな曲ですが、シンメトリックに構成してあり、この頃にサティが新古典主義に近づいていったことが分かります。
第2曲:子守唄
ノスタルジックな感覚の、美しい子守唄です。ドビュッシーの子供の領分とは異なって、子供らしさ(Enfantillage)とは自分の記憶の中にある遠い昔の子供なのでしょう。
【バッハ:ハープコード協奏曲第5番より「ラルゴ」】
現在、バッハの1台のハープシコード用協奏曲は7曲が残されています。この中で、第5番ヘ短調(BWV1056)は、その第2楽章〜ラルゴ〜の美しさの為に群を抜いて有名です。バッハのハープシコード協奏曲を全く知らない人でも、この第2楽章のテーマは聞き覚えのあることが多いと思います。バッハは教会カンタータ(BWV156)の中でも、この旋律をオーボエと弦楽の為に編曲して用いており、この為にオーボエの旋律として知っておられるかも知れないし、又、近年フランス映画で用いられ「ダバダー」と云うスキャットで歌われて一世を風靡したために、映画音楽として御存知の方もおられるかも知れないと思います。
原曲は弦のピッツィカートにのって、ハープシコードがこの息の長い旋律を装飾たっぷりに歌って行く趣向ですが、ここではピアノ・ソロで演奏できるように編曲してあります。但し、編曲と云っても右手は100%原曲と同じ、左手も殆ど原曲と変わりません。最後の1小節(弦楽合奏が第3楽章に向けてフリギア終止をする)だけは、原曲のハープシコード・パートではないものを付加してあります。
なお、このような歌謡的な旋律を奏する場合は、右手は自由に装飾し、又、バロック音楽独特のテンポ・ルバートを多用して弾きます。私の演奏は、かなり装飾を加えて自由に弾いています。結果が上出来かどうかは別にして、とにかく、機械的なテンポで楽譜通りに弾く、等と云うことはなるべく避けて自由に演奏してみて下さい。

【G線上のアリア】
「G線上のアリア」と呼ばれる曲は、バッハの管弦楽組曲第3番の第2曲目「アリア」を指します。誰かがこの曲の主旋律をヴァイオリンのG線(最低音弦)だけで弾けるようにしたと云うので、「G線上」という名前で呼ばれるようになったわけです。
元来弦楽合奏用の「アリア」を、ここでは、ピアノ用に編曲していますが、各声部をなるだけ忠実に残そうとしたために、かなり弾きにくい楽譜になってしまいました。ペダルを上手に使って、交錯する声部をうまく引き分けて下さい。
(質問が多かったので)参考までに、冒頭の、私の運指を載せます;
原則として、上の譜表に書かれている音符は右手で、下段は左手で、とって下さい。
但し、かっこで示している所は右手でとりました(矢印)。幅が広くて、同時に押せないところはバラしてアルペジオで弾いて一向に構いません。
【主よ人の望みの喜びよ】
バッハはこの有名なコラールに非常に特徴のある3連符のオブリガートをつけ、教会カンタータ147番の(1部と2部の)最後に置きました。元のコラール旋律よりも、このオブリガートの方が有名で、このコラール編曲そのものは他に幾つもあるにもかかわらず、「主よ・・・」の曲と云えばバッハの付けたオブリガートが思い出されるほどです。
ところで、全く同じような立場にあるカンタータ140番に含まれる「目覚めよ、と呼ぶ声がする」(これも、オブリガートが有名)の方は、バッハ自身の鍵盤編曲が残っている(オルガン・コラール前奏曲)のに対して、この曲はバッハ自身の編曲が残っていません。そこで、色々な人がこれを鍵盤用に編曲したのですが、最も有名なのはM.ヘス(イギリスの女流ピアニスト)のもので、大体巷に出回っているのはこの編曲が多いのです。しかし、弾いてご覧になった方はよく御存知と思いますが、このアレンジは(プロのピアニストのアレンジだけあって)大変弾きにくい。どちらかと云うと、中級から上級にかけての編曲です。そこで、今回、私がもう少し弾きやすい編曲をしてみました。これなら、初級から中級にかけての方にでも充分楽しんでいただけるかと思います。ただ、基本的には原曲に忠実で、変に短縮したりはしていませんから、それなりには難しいのですが・・。
【シチリアーノ〜フルート・ソナタ第2番より】
バッハには、フルート・ソナタと呼ばれる曲が7曲残されており、1曲は無伴奏、3曲がチェンバロ伴奏付、3曲が数字付き低音の伴奏付となっています。このうち、無伴奏を除いて6曲を、普通1番から6番まで順に番号をつけて呼んでいます。この曲は、この第2番変ホ長調の第2楽章にあたるものです。バッハの書いたもっとも美しいメロディのひとつとされており、このシチリアーノだけを取りだしても大変良く演奏されます。
《編曲譜について》
元の譜面を正確にピアノソロに移したものです。この曲はポリフォニックな書法ではなく、チェンバロが伴奏に徹して書かれており、テーマは常にフルートにありますので、メロディと伴奏、という風に弾いて頂ければ良いと思います。ただ、チェンバロのパートを右手でとったり左手でとったりしますので、若干譜読みがし辛いかと思いますが、慣れてしまえば難しくはありません。原則として、上の譜表は右手で、下の譜表は左手で取って下さい。なお、低音がどうしても保持できないので、全体にペダルを使って助ける必要があります。
【アンナ・マグダレーナ曲集より】
アンナ・マグダレーナと云うのは、バッハの二人目の妻で(先妻は死亡)、彼女のためにと書かれたクラヴィア曲集が2巻残されており、バッハが若くて音楽の才能もある(優れた歌手であったと云うことです)マグダレーナを随分と気に入っていたことが分かります。ただし、この曲集はバッハのオリジナルばかりではなく、ビバルディやテレマンなど当時著名だった作曲家の作品や、場合によってはバッハの息子たち、或いはマグダレーナ自身の作曲も書きとめられているようで、云ってみれば一家の音楽帳のような役割を持った曲集だったのでしょう。ちなみに、「ト長調のメヌエット」として有名な例の作品もこの曲集に載っていますが、おそらくはセバスチャン自身の作品ではないと考えられています。
●コラール イ短調
これは紛れもなくセバスチャン・バッハの作品で、重厚な深い味わいのある音楽です。コラール『Wer nur den
lieben Gott lässt
walten』の旋律によるコラール前奏曲です。ペータースのバッハ・オルガン全集の第5巻には、オルガン曲として掲載されており、オルガン的な雰囲気を持っています。多少難しいですが、ゆっくりしたテンポで、充分に間を取って弾くと、大変美しく仕上がります。
●アリア
ヘ長調
多分セバスチャンの作品ではないでしょう。若干稚拙な部分が見られ、幼かった息子たちの誰かが書いたのではないでしょうか。ただ、弾くのはやさしく、入門レヴェルの練習者には最適です。
●ト長調のメヌエット
初級者の愛奏曲として有名なこのメヌエットも、おそらくセバスチャンの作品ではないとされています。やさしいですが、だからと云って余り速いテンポで弾くとメヌエットの感じが失われます。遅い目の中庸テンポで弾いて下さい。
●ポロネーズト長調
当時オペラ作曲家として名が高かったJ.A.ハッセの作品で、優雅なポロネーズです。宮廷舞曲のポロネーズらしく、上品に優雅に弾いて下さい。決して速いテンポではなく、落ち着いて弾きます。
フォーレのピアノ作品としては、一連の「即興曲」「舟唄」等が有名ですが、技術的になかなか難しく、初級者の手にはおえません。しかし、この「無言歌〜Romance sans
Palores」程度ならば、易しく弾けて、かつフォーレの香りの一端を楽しむことができるかと思います。
曲自体はかなり若い(18歳)頃の作品で、「3つの無言歌 作品17」としてまとめられたものの中の3曲目に当たります。後の有名な組曲「ドリー」中の《子守歌》と同じ様な伴奏リズムにのって、優しい旋律が淡々と歌われています。

C.Chaminade(1857〜1944)は、フランスの女流作曲家です。いわゆるクラシック音楽の作曲家には女性は圧倒的に少なく、一般に広く知られている作曲家としては、クララ・シューマン、ファニー・メンデルスゾーン、及び「乙女の祈り」一発だけのバダルツェウスカくらいではないかと思います。しかし、3人とも夭折したり(バダルツェウスカ)、ピアニストとしての仕事に追われたり(クララ)、弟の陰に隠れたりで(ファニー)、そう多くの作品を残しているわけではありません。但し、ファニーは近年見直され、生前は殆ど出版されなかったけれども、結構たくさんの曲がある事が知られてきましたが・・。
これに比べてシャミナードは大変長命であった事にもよりますが、交響曲、バレー曲、協奏曲、の他にも多くのピアノ作品を残し、「作曲家」としての面目を充分に保っています。なお、この他にも女流作曲家はいたようで、http://frontpage.uk.digiserve.com/musicforpianos/に、女流作曲家とその作品について、多くの説明やMIDIファイルがあります。興味のある方は訪ねてみて下さい。
イギリスは昔から大音楽家を輩出しない国として知られており、(仕方なく)ヘンデルまでイギリスの作曲家に数えたりしていますが、しかし、その中で唯一の例外がこのH.Purcell(1659〜1695)です。夭折した(36歳)にもかかわらず、多くの劇音楽、声楽曲、ハープシコード曲を残し、イギリスのモーツァルトなどと呼ばれています。何よりもメロディが美しく、多く残した声楽曲にその本領が発揮されており、時には軽音楽編曲され(例えば、劇音楽「フェアリー・クィーン」からの「One
Charming Night」)人口に膾炙されるのはバッハなどと同じです。
ここに取り上げた組曲はハープシコード若しくは小型のヴァージナルのような楽器用に書かれており、大変シンプルで演奏も容易ですが、大家の作品らしい品格を備えており、バイエル後半程度の腕の方にはうってつけの素材かと思われます。プレリュード、アルマンド、クーラント、メヌエット、の4曲からなっており、それぞれに指使いを付した楽譜も用意しましたので、是非お弾きになってみて下さい。なお、作品に付されたZ番号は、F.ツィンマーマンによる整理番号で、その頭文字「Z」をとっています。モーツァルトのケッヘル、スカルラッティのロンゴ等と同趣のものです。
ドヴォルジャック(Antonin Dvorák
1841-1904)は、チェコ(ボヘミア)最大の、天才の誉れ高い作曲家です。生前から数々の成功をおさめ、50才の時にはイギリスのケンブリッジ大学から、名誉音楽博士号を送られ、晩年はオーストリアの終身上院議員の任命されるなど、音楽家としては最大限に功成り名を遂げました。同じ、チェコを代表する作曲家スメタナが、突然の難聴に襲われ不幸な最期であったのに比べて、彼は幸運の寵児であったわけです。
ただ、彼の作品の主流は管弦楽曲にあって、ピアノ曲は多くを残してはいません。私たちが、よく耳にするものとしては、4手用の「スラヴ舞曲集」(作品46と作品72)と「ユモレスク集」(作品101)くらいで、これらも管弦楽やヴァイオリンに編曲されたものの方が、有名です。
●シルエット集より
ここに採り上げた「シルエット集
作品8」は、余り多くないドヴォルジャックのピアノ小品中でも、珍しく良く弾かれるもので、特に、この第2番変ニ長調が有名です。おそらく、人気の高かった「スラヴ舞曲集」と同じく、基本的には「家庭消費」用のピアノ作品を出版社から請われたのでしょう。小品ですが、ドヴォルャックらしい、豊かな旋律とハーモニーが大変美しい。初級者レヴェルでは、若干難しいかとも思いますが、なにしろ曲が短い(16小節)ので助かります。楽譜も掲載していますので、是非練習なさってみて下さい。
なお、ライブラリ9に収めた、有名な「我が母の教えたまいし歌」を含む「ジプシー歌曲集」も、このシルエット集と同じ年(1879年)に出版されています。
【モーツァルト:トルコ行進曲】
初心者レパートリーの定番である「トルコ行進曲」は、イ長調のピアノソナタ(K.331)の最終楽章に含まれています。オスマントルコ帝国の勢力が盛んであった頃は、ウィーンにもオスマンの軍隊が闊歩し、この軍楽隊の独特のサウンドに魅せられて「トルコ風」な曲を書いた作曲家が多かったようです。モーツァルトもその例の一つで、それを自作のピアノソナタの最終楽章に当てはめたわけです。なお、「行進曲」と云う名称は原題には含まれず「トルコ風ロンド」となっています。
【モーツァルト:フィガロの結婚より「バルバリーナのカヴァティーナ」】
オペラ”フィガロの結婚”の第4幕最初に歌われる、小間使いバルバリーナのカヴァティーナ「失くしてしまった、どうしよう」のピアノ編曲です。フィガロの結婚は総体に明るい曲が多いのですが、その中に混じって、特異な感じのする曲です。しかし、旋律は極めて美しく、短いながら強い印象を与えます。モーツァルト自身この旋律が気に入っていたと見え、ピアノ協奏曲第18番の第2楽章にも、この旋律を使っています。近年、ピランデルロの原作をタヴィアーニ兄弟が映画化した「カオス・シチリア物語」では、このカヴァティーナがオムニバス最終篇で、執拗に流れ、非常に印象的でした。
《楽譜について》
楽譜は、私が編曲したものです。原曲を知らないと、バックのオーケストラ伴奏の部分とバルバリーナが歌う部分とを見分けるのが難しいと思います。大変美しい歌ですので、一度原曲をお聴きになって下さい。
【カッチーニ:アヴェ・マリア】
Giulio
Caccini(1545-1618)は、イタリア初期バロックの大物作曲家です。優れた歌手でもあったので、作品はオペラ、声楽曲などが中心で、中でも有名な「アマリリ麗し」は、イタリア歌曲の名曲として、声楽をかじった人ならば誰もが知る美しい曲です。この「アヴェ・マリア」は、少し前にカウンター・テナーで歌われて一躍有名になった曲ですが、ここではピアノ用に編曲しました。ゆったりとした美しいメロディを充分に歌って演奏して下さい。
Luigi
Boccherini(1743-1805)はイタリア生まれの作曲家ですが、若い頃にスペインに移り、スペインで亡くなりました。チェロの名手としても知られ、自身のチェロの為に、チェロ協奏曲や、弦楽四重奏にもう一つチェロを加えた弦楽五重奏を多く残しています。このような弦楽4、5重奏曲を多く残したことから、「ハイドンの妻」というようなニックネームを付けられています。
このメヌエットは、弦楽五重奏曲第5番(作品11)に含まれるもので、彼の作品の中で最も良く知られ、今でも盛んに演奏される曲です。
《編曲について》
私が、適当にピアノソロに編曲しています。HP上の演奏はリピートを全て省略していますが、本当はちゃんとリピートして下さい。
【ストリーボッグについて】
Jean Luis
Streabbog(1835-1886)は、ベルギーのピアニストで、[Streabbog]のペンネームでやさしいピアノ曲を多く残しました。子供用の可愛い曲が多いので、現在でも好んで演奏されます。本名は[Gobbaerts]ですから、ペンネームはこれを逆さまに綴った訳です(何と発音するのかよく分かりませんが、ベルギーだからフランス語読みでゴッベールとかゴッベルトとか読むのかも知れません)。さしずめ、ベルギーのブルグミュラーと云ったところでしょう。ショスタコーヴィッチが子供の頃、初めて興味を示したのはストリーボッグの6手用「ギャロップ」であった、と後に回想していますから、昔から子供用のピアノレパートリーとして有名だった訳です。
●「すみれ」
この曲は、少し遅い目のワルツで、大変可憐な感じの美しい曲で、ストリーボッグの中でも人気曲となっています。
●「子供の謝肉祭」
子供の謝肉祭「Le Petit
Carnaval」は題名通り、活発な明るいワルツです。ストリーボッグにはワルツのリズムを使った曲が多いですが、ワルツもテンポによっては、物静かで上品なものから、ウィンナ・ワルツのような活発なものまで、色々な表情があります。この曲は活発に弾いて下さい。
【Happy Birthday to
You】
おなじみ「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」をバイエル終了程度で弾けるように編曲してあります。賑やかにと云うよりも、少し荘重な感じで弾いて下さい。
【I wish you a merry
X'mas】
「ジングルベル」や「聖夜」とならぶ、クリスマス・ソングの定番をバイエル程度に編曲しています。
【愛のロマンス〜「禁じられた遊び」のテーマ】
ルネ・クレマンの映画「禁じられた遊び」で、演奏されたテーマ曲です。元来はスペインの民謡で、N.イェペスがこれをギターで演奏し、一世を風靡しました。ギターとピアノはレパートリー的に近いものがあって、ピアノの曲(特にバッハなど)は頻繁にギターで演奏されますし、逆にアルベニスやグラナドスなど、スペインの作曲家はギターの奏法を、ピアノの上に持ち込んで成功しています。
《編曲について》
ギターの譜面を、そのままピアノに移しただけで、大きな変更は加えていません。ただ、ギターでは簡単に弾ける広い音程も、ピアノに持ってくると少々弾きにくく、左右両手で共同して一つのアルペジオを奏することになります。ここが、難しいと云えば難しいのですが、それは慣れだけの問題で、慣れてしまえば入門者(☆1個)で充分弾きこなせる楽譜です。
【マルチェロ:オーボエ協奏曲】
映画「ヴェニスの愛」に使われて以来、一躍有名になったこの曲は、元来、バッハのチェンバロ・ソロ編曲(BWV.974)で知られていました。1923年にラウシュマン(R.Lauschmann)が、この原曲をベネデット・マルチェロ(B.Marcello:1686-1739)の作曲したオーボエ協奏曲である、としてバッハの編曲譜を元にオーボエ協奏曲の形に復元し世に出しました。現在では作曲者は、ベネデットの兄のアレッサンドロ・マルチェロ(Alessandoro:1684-1750)とされています。第2楽章が大変美しく、息の長いオーボエのカンティレーヌが綿々と奏されます。
《編曲楽譜について》
原曲はニ短調ですが、ラウシュマンはオーボエ協奏曲に復元するに当たって、キーを長2度下げて、ハ短調としています。私はこれをとりました。又、旋律の装飾は、バッハ=ラウシュマンを参考にしてはいますが、全く同じではなく私の判断で適当に書いています。この種の旋律は演奏者によって、即興的に自由に変形されるのが常ですから、楽譜にこだわらず自由に弾いて下さい。
【朧月夜】
大正3年の「尋常小学唱歌6年生」に掲載された歌で、「菜の花畑に入り日薄れ・・」の歌詞とともに、現代に生き残り、一種のスタンダード化された曲となっています。一般に文部省唱歌は、音程幅、歌詞と旋律線の一致、などよく考えて作成してあり、シンプルではありますが様々な編曲の可能性を宿す、いわば、骨太の曲が多いですが、この曲などその典型と云えるかと思います。
《編曲譜について》
私が適当に編曲したものですが、極端に易しくはせず、演奏上充分表現効果があるように書いています。従って、バイエル程度では若干弾きにくいかも知れません。逆に、中級程度の方に、結構楽しんで頂けるのではないかと思います。
【故郷】
「朧月夜」と同じ大正3年の「尋常小学唱歌6年生」に掲載された歌です。「兎追いしかの山・・」の歌い出しは、年齢に関わりなく誰もが知っている曲として、国民歌謡的な地位を占めていると云って良いかと思います。
《編曲譜について》
私が適当に編曲したものです。2コーラス歌って、間奏が入り、3コーラス目を歌うと云う形ですから、一応3番の歌詞「志を果たして・・」まで歌うようにしています。これも、中級程度の方に、結構楽しんで頂けるのではないかと思います。
【紅葉】
明治44年の「尋常小学唱歌2年生」に掲載された歌です。作曲者は「故郷」などと同じ岡野貞一。日本語で紅葉(もみじ)は、一般に「楓(かえで)」のことと「秋に木の葉が赤く色づく」ことの両方を表しますが、この曲では「赤く色づく」事を表しています。だから、曲想も赤や黄色に色づいた木々のあでやかな美しさを歌ったもので、印象派風の絵画的な色彩感に満ちています。
《編曲譜について》
私がピアノ・ソロ用に編曲しました。短い間奏を挟んで、2コーラスとしています。全体に和声の色彩感に気を配り、あでやかな中に一抹の「秋」を感じさせようとと心がけています。間奏は、歌詞にあるように色とりどりの紅葉が川を静かに流れて行く様子で、充分なテンポ・ルバートで表現して下さい。
【虫の声】
明治43年の「尋常小学唱歌」に掲載された歌です。とてもシンプルな歌詞に良くマッチした旋律で、無邪気そのものと云った風情です。
《編曲譜について》
私が適当に編曲したものです。ピアノ曲としてある程度の演奏効果があるように編曲してあります。
【五木の子守歌】
熊本県五木村に伝わる、著名な民謡です。子守歌となっていますが、いわゆる「Cradle
Song」ではなく、子守の境遇にある自分自身を歌った哀歌です。五木村は平家の落人部落と云われていますが、そこに監視役として一握りの源氏が入り込み、源平の対立に端を発する強力な身分制度が出来上がったと云われています。源氏の子孫(良か衆)に対して平氏の子孫(勧進)である自分の境遇を嘆く悲しい歌です。
《編曲譜について》
古関裕而の編曲とオルガン演奏が知られていますが、これは私の編曲です。原詞は5番までありますが、ここでは4コーラスとし、「シンプルな伴奏」「カノン風」「右手のレース飾り」「分厚い和声」としています。これもお稽古用ではなく、楽しみに弾くための編曲です。
【椰子の実】
昭和11年に、島崎藤村の詩に大中寅二が作曲し、NHKで放送されて一躍有名になり、以来国民的愛唱歌として歌い次がれています。島崎藤村の詩は伊良子岬が舞台と云われていますが、彼自身が実際に伊良子へ行って受けた印象ではなく、柳田国男からの話しをヒントにデッチあげた、いわば「軽い作品」で、これが有名になったのは、大中寅二の旋律によるところが大きいと思います。
《編曲譜について》
和声的なスタイルで編曲しています。細かくハーモニーが動きますので、ペダルに気を付けて濁らないように弾いて下さい。
【シャボン玉】
中山晋平(1887-1952)が、大正9年に野口雨情とのコンビで作った童謡です。中山晋平は、東京音楽学校のピアノ科を卒業後、作曲家としてビクターの専属になり、実に多くの多様な歌を作りました。「東京音頭」のようないわゆる「新民謡」、「波浮の港」「カチューシャの唄」のような流行歌、そして「童謡」などで、その数は2000曲とも3000曲とも云われています。
《編曲について》
作詞者の野口雨情は、長女を2才で病気のために失っており、このシャボン玉の詩は、その逝った長女への思いが込められていると云われています。第2節にある「シャボン玉消えた、飛ばずに消えた、生まれてすぐに、こわれて消えた」の部分がそれにあたります。ただ、編曲上2節では短すぎると感じたので、全体に3節にし、3節目に原詩第2節の内容を持ってきました。だからこの第3節(Meno
mossoから)は優しい思いを込めて、弾いて下さい。
【波浮の港】
波浮港は伊豆大島にある、静かな入り江です。大正13年に、やはり野口雨情とのコンビで作ったこの曲が大ヒットし、一躍観光名所となりました。哀愁漂う美しい旋律は、中山晋平の才能の高さを示すもので、彼の代表作に数えられます。
《編曲について》
イントロは、静かな入り江の夕暮れの感じです。続いて出てくる旋律は、途中、左手にも現れます。左手をしっかり弾いて旋律を浮き出させて下さい。
【雨】
弘田竜太郎(1892-1952)が、北原白秋の詞につけた童謡です。弘田竜太郎は東京音楽学校の教授をつとめながら、「浜千鳥」「叱られて」「靴が鳴る」など、多くの童謡を作曲しています。「雨」は、メランコリックな旋律が日本人の好みと合致し、童謡の代表作の一つとして生き残っています。
《編曲について》
これは、ショパンとドビュッシーを組み合わせたパロディです。雨だれの前奏曲が終わると、ドビュッシーの「忘れられし小唄(ヴェルレーヌの詩)」の第2曲目(巷に雨の降る如く、我が心にも・・)が入ってきて、その後ごちゃ混ぜになります。
【揺りかごの歌】
草川信(1893-1948)の代表的な童謡。草川信は長野県出身の作曲家で、東京音楽学校卒業後、いわゆる「赤い鳥」運動に賛同し、多くの童謡を書きました。あちらこちらの学校の教師を勤めながらの作曲でしたので、中山晋平のような専門の作曲家とは呼べないかも知れませんが、「揺りかごの歌」「夕焼け小焼け」「どこかで春が」など多くの童謡を残しています。亡くなる少し前には、当時の童謡ブームの中、ポリドール・レコードの専属作曲家になっています。この「揺りかごの歌」は、赤い鳥運動の中心人物の一人でもあり、童謡の作詞にも並外れた才能を示した北原白秋の詞によるものです。
《編曲について》
3コーラスあって、2コーラス目の終わりは少し変化しています。そのままシューベルトの子守唄が聞こえ転調の経過句に入り、3コーラス目は半音下のロ長調です。決して難しい編曲ではありませんが、メロディと単純なコードというような編曲ではなく、充分音符を吟味してありますので、それなりの弾き応えはあると思います。
【夕焼け小焼け】
揺りかごの歌と並んで有名な草川信の代表的童謡です。ノクターン風の1コーラス目と、少し変化を加えた2コーラス目と云う風に編曲してあります。2コーラス目の後半、左手のメロディに移るところから、Tempo
I で、この辺のテンポの変化をよく飲み込んで弾いて下さい。
【春の歌】
「春が来た」(岡野貞一)、「春の小川(同)、「早春賦」(中田章)、「花」(瀧廉太郎)、等々童謡には「春」を歌った歌が目立ちます。それらの中でもこの草川信の「春の歌」は、うららかな春の感じがとても良く出ている名曲です。シンプルな旋律ながら、豊かなハーモニーの変化をを受け入れる事が出来る構造で、編曲しやすい曲でもあります。
《編曲について》
春のやわらかな感じを出そうと考え、1、3、コーラス目では4度重音を多用しています。その点が若干弾きにくいかも知れませんが、単に指の幅の記憶だけの問題ですので、慣れてしまえば何のことはありません。転調してからは、おおらかに歌って下さい。
【花】
作曲者の瀧廉太郎(1879-1903)は、日本最初の本格的洋楽作曲家として嘱望された人ですが、結核のために23才で夭折しました。九州の元「日の出藩」の家老という家柄に生まれ、東京音楽学校卒業後、1900年にライプチッヒ音楽院に留学しましたがすぐに結核を発病し、数ヶ月で帰国、結局そのまま数年後に亡くなっています。彼の残したものは、殆どが声楽作品ですが、「荒城の月」「花」「箱根八里」などは、現在でも好んで歌われています。とりわけ「荒城の月」は、彼の代表作で、台湾では「結婚式の歌」として欠かせないなど外国でも評価がある(?)ようです。
「花」は四季四部作の一つとして書かれた歌ですが、明るく分かりやすい旋律と歌詞がマッチし国民的愛唱歌の一つとして認められています。
《編曲について》
瀧廉太郎はピアノやヴァイオリンの演奏も出来た人で、原曲には立派なピアノ伴奏がついています。これを、全面的に活かして、上に旋律を乗せただけの編曲で、私の他の唱歌編曲とは異なって和声なども一切変更していません。ただ、決して行進曲ではありませんので、あまり元気良くなりすぎないようにだけ注意して弾いて下さい。
【荒城の月】
瀧廉太郎の代表作である「荒城の月」は、1901年に中学校(旧制)の唱歌として懸賞付きで公募されたものです。山田耕筰が手を加え、旋律も若干変更されましたが、私たちの知っている「荒城の月」は、この山田耕筰版のことが多いようです。「荒城」が何処の城かはハッキリとしていないようで、作詞者である土井晩翠の故郷仙台(の「青葉城」)であるとか、瀧廉太郎の故郷大分県であるとか、様々に云われます。この曲は、ちょっと聞くと4、7抜きの日本音階のように思いますが、そうではなくしっかりした西洋風の短調で出来ていてなかなか「骨太」の旋律です。
《編曲について》
ピアニソロで楽しめるように編曲しています。最初はカノン風に始まりますので、左手に出てくる旋律を大事に弾いて下さい。
C.Gluck(1714-1787)は、ドイツ生まれの作曲家で、オペラの改革者として知られています。その頃の本場イタリア歌劇が、どちらかと云うと「歌手」の人気と技量で見せる事に重きを置き、「劇的」な意味での表現力に欠けていたのを、近代的な劇表現のオペラに改革しようとしたのがグルックの功績とされています。生まれはドイツですが、すぐに父親の関係でチェコ(ボヘミア)に戻りそこで教育を受け成人しています。音楽家になってからの活躍の場はパリとウィーンで、結構「国際的に」活躍したと云っても良いでしょう。パリに来てからは(オペラに関して同じような意見を持っていた)J.J.ルソーとも親交があったようです。
《精霊の踊り》
ギリシャ神話を元に作曲されたオペラ「オルフェウスとエウリディーチェ」の中で演奏される有名な曲です。ヘ長調のメヌエットとニ短調の遅い部分とが組み合わされています。ニ短調の部分は初演から随分後に、フランス語版を作るに当たって追加されたもので、初演時には含まれていなかったものですが、現在では「精霊の踊り」と云えば、このニ短調部分も含む事が多いようです。
※楽譜について
私が適当にピアノ編曲したものです。ニ短調の部分を演奏した後、最初のメヌエットにダ・カーポして下さい。
ディアベリ(Anton Diabelli
1781-1858)は、オーストリアの楽譜出版者、作曲家、ピアノとギターの教師として知られています。若い頃にはハイドンの父(ミハエル)のレッスンを受け作曲家を志していましたが、作曲家よりは楽譜出版社として成功し、若きシューベルトを見い出して出版するなど、当時から「楽譜出版」者として知られていたようです。ベートーヴェンが彼の主題につけた「32の変奏曲」は有名ですが、これも出版社の企画としてシューベルト、リスト、フンメル、ツェルニーなど50人の作曲家に依頼して、彼のワルツをテーマに大変奏曲集を出版しようとした結果です(ベートーヴェン自身はこれに参加せず、独自に32の変奏曲を書いたわけです)。
《ソナチネ ヘ長調
作品168-1》
ディアベリは4手用ピアノ、ギターとのアンサンブル、などの他にピアノ独奏用のソナチネを10数曲残しています。その幾つかは、ソナチネアルバムの第2巻に収録されていて知られていましたが、それ以外に1960年のフランス映画「モデラート・カンタービレ(日本題名:雨のしのび逢い)」に使われたために有名になりました。作品168-7
イ短調の物憂い旋律をご記憶の方も多いでしょう。
このヘ長調のものはその7曲セットの作品168のソナチネの中の第1曲です。やはり、モデラート・カンタービレの標語がつき、心地よいやさしさを持った平易な曲です。ソナチネ・アルバム収録のものより弾きやすく、バイエル終了程度で充分弾ける初級者向けのお奨め曲です。
リヒナー(Heinrich Lichner 1828-1898)は、ドイツ生まれでポーランドで活躍した、指揮者、作曲家です。長らく教会の合唱指揮者を務め、作品も教会合唱作品が多いようですが、現在では余り演奏されません。リヒナーは、又初心者用のピアノ作品もたくさん残したようですが、その中でこの「わすれな草」だけが良く演奏されるようです。ただ「わすれな草」が原題なのかどうか、私は知りません。どうもリヒナーの小品に適当な名前を付けて出版社が出したのではないかと思います。6/8拍子の単純な伴奏にのって可憐な旋律が歌われますが、とりたてて、わすれな草の描写と思える部分もなく、余り題名にこだわることはない、と思います。曲は大変やさしく、バイエル後半で充分弾けると思います。
日本では「雪山賛歌」と云う題名で、異なった歌詞で歌われ親しまれていますが、このクレメンタインは、近年大流行した韓国製ドラマ《春のワルツ》の中で用いられた形で演奏しています。主人公のピアニストが恋人に弾いてやると云う趣向です。最後は短調になり、雪山賛歌とは随分異なった趣です。
讃美歌として昔から知られている曲です。何故かアメリカ人が好み、第2の国歌のようにしてよく歌われます。この場合ゴスペルのように「こぶし」を利かせて、やや下品に歌われるのが常で、私のピアノ編曲でもそのような節回しを使いました。
【S.ロンバーグ:When I grow too old to dream】
Sigmund Romberg(1897-1951)は、ハンガリー生まれですが、22才の頃にアメリカに渡り人気作曲家になりました。代表的な曲には、「恋人よ我に帰れ(Lover, Come Back to Me)」「朝日の如くさわやかに(Softly as in a Morning Sunshine)」などがあり、独立した曲として、又ジャズのスタンダード・ナンバーとして現在でも盛んに演奏されます。この2曲を含む「New Moon」や「学生王子」などは、彼のミュージカルの傑作で、ロンバーグは「ミュージカルの王」と呼ばれています。
「When I grow too old to dream」は「恋人よ・・・」「朝日の如く・・」などとならんで、ロンバーグを代表する曲で、日本語訳題名「夢見る頃を過ぎても」で昔から大変良く知られています。近頃題名だけをスタンダード・ナンバーからパクると云う妙な風潮があり、同じような題名の和製歌謡曲や映画などがあってちょっと紛らわしい感じもします。歌詞の大意は「私が、もう夢を見る頃が出来なくなるくらい年をとってもあなたを愛します・・」と云う甘い愛の歌です。