ガーシュイン
【ガーシュインについて】
G.Gershwin(1898〜1937)は、現在もアメリカの人気No.1作曲家に挙げられると思います。39才になる直前に亡くなり、若死にだった割には、「ポギーとベス」を含む多数のミュージカル、ポピュラー歌曲、「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」などのオーケストラ曲、など実に多くの作品を残しました。
彼は、作曲家としての正式な教育は受けておらず、基本的にはピアニストであり、出世作「スワニー」で芽が出るまでは、ティンパン・アレイの店先での試し弾きピアニストとして、生計を立てていました。だから、代表作「ラプシディ・イン・ブルー」なども、ガーシュインがピアノを弾きながらピアノ・スケッチを書き、それを元にグローフェ(組曲「大峡谷」の作曲者)が管弦楽譜を書き上げる、と云うような作られ方をしています。彼自身はロシア移民の子ですが(だから、本名はガーシュヴィッチとか云うロシア系の名です)、ヨーロッパ音楽との接点は薄く、同じアメリカのピアニスト=作曲家の、ゴットシャルク、マクダゥエル、或いは夭折したグリフェスなどの系譜とは異なって、独自のアメリカ的音楽を作り出しました。これは一言で云えばアメリカ・ニグロの音楽を積極的に取り入れたことです。「ポギーとベス」を代表として、ニグロのブルージーな音楽の影響の濃い作品も多く、これが、彼の作品の魅力の源泉で、又、多くがジャズ・スタンダード曲として、今日も頻繁に取り上げられることにつながっています。
【3つのプレリュード】
ピアニストでありながら、ガーシュインには純然たるピアノ・ソロ作品は殆どなく(自分の作品のピアノ編曲は沢山ありますが)、この1926年に出版された「3つのプレリュード」くらいしか、知られていません。曲は、ジャズ的な趣が非常に強く、どちらかと云えばジャズ・ピアニストの即興演奏に近いものです。しかし、ジャズを弾いてみたいけれども、そのまま弾けるような楽譜がない・・と思っておられる、典型的な中級クラシカル・アマチュア・ピアニストにとっては、この曲は最適でしょう。そんなに難しくはないですが、充分演奏効果があり、楽譜通りに弾くだけでジャズ・ソロ・ピアノの雰囲気を味わうことが出来ます。
●第1番
変ロ長調
ブルーノートを使ったジャズ風の旋律ですが、伴奏には3+3+2に分割されたラテン風のリズムが刻まれます。ラテン・パーカッションが聞こえてくるようなリズミカルな曲です。
●第2番
嬰ハ短調
ブルージーな雰囲気のニグロ的曲想です。ガーシュイン自身は、ロシア系移民の子で黒人的な血とは無縁ですが、ポギーとベスの作曲の際にはニグロの旋律や発音を盛んに研究しており、このようなイディオムはお手もののだったようです。このような曲では、ジャズ風に8分音符2個の対を、いわゆる「スウィングさせて」発音するのが良く、私はそのように弾いています。
●第3番
変ホ短調
全く即興演奏然とした曲で、手なりに弾いて作った感じが強くします。ガーシュインのピアノ曲の特徴は、基本的にはジャズのような即興性にあって、純粋のクラシック的作曲に比べると、幾分冗長で無駄な音も多いのですが、その分、弾きやすくて演奏効果があります。
【サマータイム】
ポギーとベス(Porgy and
Bess)は、ガーシュインが亡くなる2年前に書かれたオペラで、全編殆どがニグロ弁で書かれたセリフ回しと、ガーシュインお得意のニグロ的味付けの音楽とにより、ユニークなオペラとして評価されています。中でも、有名なのがこの「サマータイム」で、オペラを離れて、独立した曲としてガーシュインの代表作に数えられています。様々な形態の演奏がありますが、やはり、ジャズ・イディオムで演奏されることが最も多く、ジャズメンたちのこの曲の名演は数知れません。一度映画化されたことがありますが、遺族とのトラブルがあり、結局お蔵入りとなった因縁があって、劇中音楽が有名な割には、オペラそのものはそれほど敷衍していないようです。
《編曲譜について》
私が編曲したもので、ジャズっぽくはせずに、夏のけだるい感じをできるだけ幻想的に出そうと心がけました。オペラの中で歌われる原曲に、「フィーリング」としては近いかと思います。それでも、2番は幾分「ブルース」的な感じを出しますので、メロディなども若干「フェイク」を加えながら演奏して頂ければ良いかと思います。楽譜は、若干難しそうに見えますが、そんなことはなく、☆3個で充分、場合によれば☆2個としても良いくらいの程度かと思います。上段に書かれた音符で、左手でとる部分に注意して下さい。
【Somone to watch over me】
1926年、「Oh、
ケイ」と云う題名のミュージカルのために書かれたましたが、その後も、色々な映画やミュージカルに使われ有名になった非常に美しいバラードです。題名は直訳すると、「遠くから私を見つめているべき誰か」となりますが、「誰かが私を見つめている」とか「良き伴侶を」とか訳されています。要するに、まだ見ぬ将来の恋人を想って歌う歌です。最初は、アップテンポの曲として書かれたと云うエピソードがありますが、充分遅いテンポで歌う方が効果的で、ジャズでの演奏でもアップテンポで奏されることはまずありません。
《編曲譜について》
私が編曲したもので、出来るだけ「ロマンチック」な感じを出すよう心がけています。1コーラスしかありませんが、気分が向けば即興で第2コーラスを弾いても良いと思います。