E.グリーク:抒情小曲集
【グリークについて】
Edvard Hagerup
Grieg(1843-1907)
は、スコットランド系ノルウェーの作曲家です。基本的には『ピアノの名手』であったグリークは、作品もピアノ曲に偏っていて、交響曲、協奏曲、といった大規模な管弦楽曲は殆どなく(各1曲ずつ、それも20代前半に書かれたまま後続はなし)、その点でショパンと似通ったところがあるために『北欧のショパン』と呼ばれたりもします。従って、ショパンと同じく、持ち味は『ピアノ小品』で、数多く書かれた『抒情小曲集』等は、軽い小品ばかりであるにもかかわらず、グリークの作品の主要部分を占めていると考えられています。
【抒情小曲集】
抒情小曲集は全部で10巻(66曲)あって、第1巻は1867年(23歳)、最後の第10巻は1901年(58歳)、つまり作曲活動のほぼ全期間にわたって書き続けられたものです。グリークの主要作品の一つで、何曲かは管弦楽に編曲されたりして親しまれています。
●『アリエッタ』〜第1巻-1
第1巻の冒頭を飾る曲です。ここから30数年経って彼がこの曲集を閉じる決心をした第10巻の最後の曲(『余韻』)にもこの旋律が使われています。音型、雰囲気ともシューマンを思わせる曲で、若きグリークがシューマンの影響を強く受けていた事がよく分かります。
●『ワルツ』〜第1巻-2
アリエッタとは異なって、北欧風の雰囲気を感じさせる曲です。
●『民謡』第1巻-5
この曲集には、民謡(Folkvise)と題された作品がいくつか含まれます。いずれもノルウェー風の旋律を用いていますが、この曲は何となくショパンのマズルカを思い起こさせます。
●『蝶々』第3巻-1
華麗でピアニスティックな美しい仕上がりです。結構速いテンポにもかかわらず、実際に弾いてみるとよく手に馴染み思ったほど難しくはありません。グリークが優れたピアノ奏者であった証拠です。

●『春に寄す』〜第3巻-6
抒情小曲集中もっとも有名な曲の一つです。Allegro appassionato
(速く、熱情的に)との発想記号を見ると北欧に於ける『春』は、私たちの春に対する「うららか」なイメージとは余程異なっていることが分かります。

●『エレジー』〜第4巻-7
半音階的な和声を使って、北欧風の陰鬱なイメージを表出しています。グリークの特色の一つは和声に対する鋭い感覚にありますが、その面で特徴の良く出た曲です。
●『小人の行列』〜第5巻-3
グリークは、抒情小曲集第5巻から選んで管弦楽編曲を施し『抒情組曲』として発表しています。この曲はその抒情組曲の第4曲目にあたります。なお、『小人』は北欧伝説の妖精の一種で、全体に伝説の怪しい雰囲気が良く出ています。
●『ノクターン』〜第5巻-4
印象派風の美しい仕上がりです。夕映えの一瞬の輝き、海鳥の鳴き声、夜の静寂、などフィヨルドの夕暮れから夜にかけての静かな雰囲気が大変上手に描写されています。
●『小川』〜第7巻-4
サラサラ流れる小川の描写かと思いますが、北欧の小川だけあって手触りはヒヤリと冷たく、雪解け水の小川を想像させます。雰囲気的にはスメタナの『モルダウ』のイントロに似ているような気がします。
●『トロルドハウゲンの結婚式』〜第8巻-6
トロルドハウゲンというのは、ベルゲン近郊のグリークの住んでいた町の名前です。彼は42歳の時にトロルドハウゲンに家を買って引っ越してきますが、その後ずっとここを本拠として暮らしました。彼の墓もこのトロルドハウゲンの直ぐ近くのフィヨルドを見晴らす丘にあります。曲は、この田舎町の結婚式の雰囲気を描いています。ひなびた雰囲気の中ににぎやかな村の人たちの笑顔やさざめきがうかがえます。