ハイドン
【ハイドンについて】
ハイドンの功績の一つは、何と云っても多くの交響曲にあり、それを通じて古典派ソナタを完成させた(交響曲と云うのは要するに管弦楽ソナタです)と云うことが出来ますが、その割にはピアノ・ソナタは(数は結構あるのにも拘わらず)あまり演奏されません。モーツァルト、ベートーヴェンに比べると意外な感がします。その理由は、モーツァルト、ベートーヴェンがピアノの名手であったのに対して、ハイドンはそれほどでもなかったこと、及び、ハイドンの時代は、ピアノと云う楽器は未完成で、ピアノソナタと云っても、完全にピアノの為に書かれた訳ではない、と云うことが挙げられます。実際ハイドンの若い頃は、未だ大バッハ、ヘンデルとも健在で、鍵盤楽器もチェンバロ、クラヴィコード、ピアノ、が入り交じって使用されていました。従って、彼のピアノソナタの多くはチェンバロで弾かれたこともあったと思われ、クラヴィア・ソナタ(クラヴィアとは鍵盤楽器一般を指す言葉として使われます)と呼ばれることも多いようです。
ハイドンの作品はモーツァルトのケッヘル番号のような権威のある目録化が遅れ、確定的な作品番号がありません。現在では、ホボーケンによる分類番号で呼ぶのが一般的に曲を特定しやすいとされていますが、交響曲などは、まだ第何番と云うことのほうが多いようです。
【ピアノ・ソナタ ホ短調
Hob.XVI-34】
短調と云う調性が持つ「暗さ」は殆どなく、何かワクワクするような快活さに満ちたハイドンらしいソナタです。ただ、第1楽章などは遅く弾くと、暗く重くなりますから気をつけて下さい。この曲で難しいのは第2楽章で、このように32分音符が続くパッセージでは、楽譜通りに流すと味けない指の練習のようになってしまいます。フレーズと段落を読みとってうまく表情を彫り込んで行かなければなりません。第3楽章は大変リズミカルな楽章です。右手フレーズのアクセントに気をつけながら軽快に弾いて下さい。
【ピアノ・ソナタ ハ長調
Hob-XVI-35】
ソナチネ・アルバムでお馴染みのこの曲は、ペータースのハイドンゾナタ集第1巻の5曲目に掲載されていることもあって、5番と呼んできましたが、35番と呼んだり、47番と云う数え方もします。ホボーケンによる分類では、16-35と云うことになっています。なお、ソナタ・アルバムにも同じ曲が掲載されています。
【ピアノ・ソナタ 嬰ハ短調
Hob-XVI-36】
ホボーケン分類では16-36、ペーター版では第6番にあたります。曲は第3楽章のメヌエットまでしかなく、第4楽章に該当するものが脱落したものと思われます。掲載している第2楽章も、通常の緩徐楽章ではなく、スケルツアンドとかかれた、軽快な楽章で、ソナタとしてはいささかアン・バランスな構成です。異なった曲が混入したか、寄せ集めで作られたか、とにかく「不完全」を印象づける作品です。ただ、嬰ハ短調と云う調性のせいもあって、全体に少しアジタートな雰囲気に満ち、ハイドンのイメージとは少し異なる大変魅力的なソナタです。