A.ヘンゼルト
【ヘンゼルトについて】
Adolf von
Henselt(1814-1889)は、ドイツのピアニスト&作曲家です。フンメルの弟子としてピアノはかなりの名手であったらしく、彼の名人芸を物語る色々な逸話が伝わっています。しかし、「世界一内気なピアニスト」として知られ、人前で弾くことを好まず、24歳でロシアの宮廷ピアニストになってペテルスブルグに行ってからは、殆ど公の演奏会を開かなかったと伝えられています。彼ははヘ短調のピアノ協奏曲はじめ多くの作曲を残していますが、現在ではほぼ同年代のショパンやリストほどは演奏される機会に恵まれず、どちらかと云うとマニアックなファンに支持される、と云うような存在になっています。
【愛の歌〜Love Song (Liebeslied)
作品5-11】
彼はピアノの練習曲をいくつか残しましたが、これはその「12のサロン風練習曲」の第11番目に当たる曲です。主旋律は常に内声部に置かれ、時には右手、時には左手で弾かれます。ヘンゼルトは左手が大変大きかったと伝えられており、この曲でも(左手で低音と旋律部分を同時に奏する時に)左手に大きな幅が要求されます。そこが難しいと云えば難しいのですが、しかし、全体的にはそれ程困難な練習曲ではなく、きちんとバイエルが終了していれば問題なく弾ける程度と思います。
【ロマンス
変ロ短調作品10】
ロマンスと云う言葉は、元来、中世の騎士道小説(叙事詩)を指して用いられたものですが、そこから小説の意味に転化したり、ロマン主義と云うように使われたり、様々に転化しました。音楽では、一般的に抒情的な「小品」の意味で使われ、色々な作曲家がこの題名を書いています。ただ、日本語の用法からイメージされる「恋愛」とは直接関係ありません。
この曲は、途中左手の内声が込み入って若干複雑な様相を呈していますが、手なりに出来ているために弾いて見ればなんでもありません。手際の良い小品で、短いですし「愛奏曲」レパートリーの一つとして加えて頂ければ良いかと思います。