ムソルグスキー

 

【ムスルグスキーについて】
モデスト・ムスルグスキー(1839〜1881)は、近代ロシアの作曲家の中で、非常に個性的な才能に溢れた作曲家として知られています。ロシア近代音楽の父とされるグリンカや、又最大の作曲家チャイコフスキーが、ヨーロッパ音楽をもろに受け継ぎ、大変オーソドックスなスタイルを持っていたのに対し、彼は生涯ロシアの地を出ず、純ロシア的な血を守り続けた作曲家でもあります。ただ、それが、彼自身の個性的なスタイルを育む事になり、逆にヨーロッパ本家(にあって、脱ヨーロッパを志向する)ドビュッシーなどに、強い影響を与えました。

彼は、貴族の血をひく大地主の子であり、その頃の慣習に従って職業軍人の道を選んだ事もあって、プロ作曲家ではなく、交響曲やソナタと云った、いわばプロ作曲家のジャンルには見るべきものを残していませんが、小品、特に歌曲には素晴らしい作品を多く残しており、後の歌劇「ボリス・ゴドノフ」とならんで、声楽分野での作品に高い評価を与えられています。


【6つの歌曲より】
●「お前は何処に? 小さな星よ」
彼の最初期の歌曲で、のびやかでメリスマティックなロシア的旋律が歌われる、大変美しい曲です。詩も平坦で民謡的なもので、後の歌曲にみられるような「詩と旋律が密着した濃い表現」は見られませんが、ナイーヴなムソルグスキーの感性が良く現れており、オーケストラ版もあって良く知られています。

※楽譜について
楽譜は、私が適当に編曲したものです。ピアノで歌旋律の「こぶし」を回す表現には、無理がありますが、美しい曲で是非知って頂きたいと考えて、敢えて編曲してみました。旋律を(このままオクターヴ下げて)チェロなどで奏されると、大変良い感じが出ると思います。


【展覧会の画より】
10曲からなる、ピアノ組曲「展覧会の画」は1874年に書かれています。その前の年に親友で、建築家、画家でもあったハルトマンが亡くなり、この年ペトログラードで遺作の展覧会が開かれます。この印象をつづったものが、組曲「展覧会の画」です。画と言っても、重厚なものではなく、イラストや設計図と云ったものですので、この組曲もユーモア溢れる軽いタッチの作品がならんでいます。ただ、この頃はボリスゴドノフの初演、名作歌曲集「死の歌と踊り」、リムスキー・コルサコフの編曲で知られる「禿げ山の聖ヨハネ祭の夜(一夜)」などの名作が目白押しで、ムソルグスキー自身としても創作意欲に溢れた時期だったのでしょう、軽い作品ながら、個性とアイデアに満ちた曲が並んでいてムソルグスキーの代表作に数えられています。

色々な人の(ELPのロック編曲を含め)管弦楽編曲があって、特にラヴェルのそれは有名ですが、この曲の持ち味は「親友の死に際して、個人的に書き残した想い出帳」と云った色合いが強く、(確かに余りピアニスティックではありませんが)ピアノで弾くのが適していると、私は思います。

●プロムナードと小人
プロムナードは「散歩」の意味で、展示されている画から次の画へと移動して行く光景を表しています。この組曲にあって、多くの曲は、直前にプロムナードと題された短い曲を伴い、休みを空けず、すぐに入ってきます。それぞれのプロムナードは同じ主題を使っていますが、直前に見た画の印象が反映し、様々な変化を見せ、なかなか良くできています。この曲は冒頭の曲ですので、さしずめ、展覧会の会場にゆっくりと入って行く、と云う感じでしょうか。
小人(Gnomus)はロシア民話に出てくる、地中に住む妖精です。地中から這い出てきて、チョロチョロと動き回る様子を示します。明るいプロムナードから続く、雰囲気の切り替わりが実に良く出来ています。