J.ラフ

 

【ラフについて】
Joseph Joachim Raff(1822-1882)は、スイス生まれの作曲家です。11曲の交響曲をはじめ多くの作品を残していますが、現在では多くが忘れ去られ、ヴァイオリンとピアノのための「カヴァティーナ」(作品85-3)以外はあまり演奏される機会がありません。作曲家としてよりもマクダゥエル(E.MacDowell)の先生としての方が有名ではないかと思います。或いはリスト一門の一人として、リストの交響作品の編曲を(ドップラーなどとともに)受け持った事でも知られています。1879年にマクダウエルはドイツに留学しますが、ここでラフに認められ、その時に書いたピアノ協奏曲第1番をラフにつれられてワイマールのリストに見て貰いに行ったようです。ラフは弟子マクダゥエルに「私の作品は忘れられても、君の作品は残るだろう」と云った、と云う話が伝わっています。


【ロマンス 作品2】
この曲は、最初「3つの性格的小品」と題されて出版されたものの第2曲目に含まれています(ラフはほぼ独学で音楽を勉強したようですが、メンデルスゾーンに見いだされて世に出ました。従ってこの題名はメンデルスゾーン〜「7つの性格的小品」作品7〜への敬意のあれわれでしょう)。ただし、ラフは、晩年に若い頃出版された作品に大幅に手を入れ整理しています。この曲もその例の一つで、作品番号は若いですが実際に現在の形になったのは、ラフが50歳を越えてからです。従って、ピアノ書法も円熟し、小曲ながら優雅な味わいのある佳曲に仕上がっています。

【糸を紡ぐ少女 作品157-2】
作品157は二つの小品から出来ています。一曲目が「カヴァティーナ」、2曲目がこの「la fileuse」です。糸車のくるくる回る情景は、よく音楽描写の題材になり、当然きまって「速弾き」パッセージの対象です。ラフのこの曲も例に洩れず、速弾きの伴奏の上にシンプルなメロディが歌われる仕掛けの曲ですが、この「速弾き」パッセージが大変弾きやすく出来ていることが特徴です(実際に弾いてみればすぐ分かります)。ラフはこの手の「サロン風ピアノ小品」(要するに、やさしく弾けて演奏効果がある素人向きの小品)の大家で、熟練したサロン風小品の作曲テクニックを持っていたのです。19世紀はピアノが急速に家庭に広まった時代で、家庭消費向けのピアノ小品の楽譜がたくさん作られ売られた時代です。この辺りは、現在流行歌がカラオケで歌われることを計算して作られ売られるのと全く同じ構造です。その意味で、この曲は、初級から中級程度の方が発表会で弾いて聴衆を「オッ!」と云わせられるような作品として最適かと思います。