ソナチネアルバム
| 第1巻 第1番ハ長調(クーラウ) | 第2巻 第5番ト長調(クーラウ) |
| 第1巻 第7番ハ長調(クレメンティ) | |
| 第1巻 第10番ヘ長調(クレメンティ) | |
| 第1巻 第13番ハ長調(ハイドン) | |
| 第1巻 第14番ハ長調(モーツァルト) | |
| 第1巻 第17番ト長調(ドゥーセック) | |
| 第1巻 ロンドニ長調(モーツァルト) |
【第1番:クーラウ作品20-1】
クーラウ(Friedrich
Kuhlau)は、ほぼベートーヴェンと同じ頃の作曲家です。結構たくさんの作品を残し、このソナチネ以外にもフルートの曲で知られており、ベートーヴェンと親交があったために、フルートのベートーヴェン等と呼ばれることがあります。自身はドイツ人ですが、デンマークに移住し、ここで成功しましたから、数少ないデンマークの作曲家としても数えられます。ソナチネアルバムの冒頭を飾る、このハ長調のソナチネ(op.20
No.1)は中々の佳曲です。特に第1楽章はフルートを思わせる流麗なメロディで大変美しく仕上がっています。なお、この楽章は小さいながらもバランスのとれたソナタ形式です。各部分を(テンポやディナーミクの変化を用いて)明解に区切って弾くのが大事です。
【第2巻
5番 クーラウ作品88-2】
小さいながらも良くまとまった第1楽章、Andante Cantabile
の典型的な第2楽章、速くて活発なロンド楽章、の3楽章から出来ています。第1楽章の展開部は短いながらドラマチックによく盛り上がり、大変表現力豊かな楽章です。
【第7番:クレメンティ作品36-1】
クレメンティは、モーツァルト、ベートーヴェンと同時代(クレメンティは長生きでしたから、モーツァルトよりも年上でかつベートーヴェンよりも後で亡くなっています)の作曲家であり有能な鍵盤奏者です。但し作曲家としてのクレメンティは、現在では、余り評価されておらず私達の知っている作品はソナチネアルバムに収録されているいくつかのソナチネ、及び「グラドス・アド・パルナッスム」と題された練習曲集くらいでしょう。しかし後者は有名でかなり高度な練習曲集で、ソナチネを練習してからずっと後に出くわす事もあるかと思います。ちなみにドビュッシーの「子供の領分」第1曲目「ドクター・グラドス・アド・パルナッスム」はこの練習曲のパロディです。
この曲は、ソナチネ・アルバム第1巻の7曲目に掲載されている、3楽章からなるソナチネです。ソナチネ・アルバムの冒頭には(誰がつけたか知りませんが)練習順序なるものがついていて、それによるとソナチネ・アルバム第1巻はこの曲から始めるのが良い、となっています。そのせいもあってソナチネを練習した事のある人にはポピュラーな曲です。
【第10番:クレメンティ作品36-4】
ソナチネ・アルバム第1巻の10曲目に掲載されている、3楽章からなるソナチネです。簡素ながらよくまとまったソナタ形式の第1楽章、表情豊かな緩徐楽章、ハープシコードを思わせる運動的なロンド楽章、から成り立っています。
【第13番:ハイドン(Hob:16-35)】
ソナチネ・アルバム第1巻の13曲目に掲載されているハ長調のソナタですが、ハイドンの作品はモーツァルトのケッヘル番号のような権威のある目録化が遅れ、確定的な作品番号がありません。ペータース版のハイドンゾナタ集第1巻の5曲目に掲載されていることもあって、5番と呼んできましたが、35番と呼んだり、47番と云う数え方もします。ホボーケンによる分類では、16-35と云うことになっています。なお、ソナタ・アルバムにも同じ曲が掲載されています。
ハイドンの功績の一つは、何と云っても多くの交響曲にあり、それを通じて古典派ソナタを完成させた(交響曲と云うのは要するに管弦楽ソナタです)と云うことが出来ますが、その割にはピアノ・ソナタは(数は結構あるのにも拘わらず)あまり演奏されません。モーツァルト、ベートーヴェンに比べると意外な感がします。その理由は、モーツァルト、ベートーヴェンがピアノの名手であったのに対して、ハイドンはそれほどでもなかったこと、及び、ハイドンの時代は、ピアノと云う楽器は未完成で、ピアノソナタと云っても、完全にピアノの為に書かれた訳ではない、と云うことが挙げられます。実際ハイドンの若い頃は、未だ大バッハ、ヘンデルとも健在で、鍵盤楽器もチェンバロ、クラヴィコード、ピアノ、が入り交じって使用されていました。従って、彼のピアノソナタの多くはチェンバロで弾かれたこともあったと思われ、クラヴィア・ソナタ(クラヴィアとは鍵盤楽器一般を指す言葉として使われます)と呼ばれることも多いようです。
【第14番:モーツァルトK545】
モーツァルトは多くのピアノ・ソナタを残しましたが、このハ長調ソナチネはトルコ行進曲付きのソナタ(K.331)と並んで最も良く知られたものの一つに数えられます。演奏技術が平易な為にソナチネ・アルバムに掲載されていますが、美しさは他の立派なソナタに少しも劣りません。特に第1楽章は形式的にも良くまとまり、透明感のある美しさを醸し出しています。
なお、モーツアルトのピアノは現在のような完成されたアクションを持った大型のピアノではありません。従って、余り極端なダイナミクスの変化等は似合わず、やや平坦な演奏の中でこそ生きてくる音楽です。とりわけ第2楽章等の緩徐楽章は、充分なテンポの揺れや自由につけ加える装飾音等の、タッチの強弱以外の要素で表現するのが演奏のコツかと思います。
【第17番:ドーゥセック作品20-1】
ソナチネ・アルバム第1巻の17曲目に掲載されている、2楽章からなるソナチネです。作曲者ドゥーセックは生没ともにベートーヴェンよりも10年ほど早い、ほぼ同期のボヘミア生まれの演奏家です。作品は現在ソナチネ(アルバム第2巻にもあり)位しか知られていませんが、弾いてみるとベートーヴェン等と異なって軽やかなリズム感に溢れていますが、メリハリの効いた形式感等はさほど感じられません。従ってどちらかと云うと速めのテンポを採り、楽しく弾きとばす、と云うような演奏が似合うかと思います。
【ロンドニ長調:モーツァルトK485】
ソナチネアルバムには、純然たるソナチネ形式の他に手頃なピアノ小品がいくつか付録として付いています。この曲はその一つですが、付録と云うよりは立派な一曲で、演奏にも相当な技術を必要とします。モーツァルト30歳頃の作品で「ロンド」と云う名前ですが、典型的なロンド形式ではなく、かなり自由な形をとりソナタ形式のような展開部も見受けられます。冒頭のテーマは何度も形を変えて現れ、円熟したモーツァルトの作曲技法が伺えます。