チャイコフスキー:ピアノ曲集『四季』他
【チャイコフスキーについて】
1840〜1893のロシアの作曲家です。ムソルグスキー(1歳上)やリムスキー・コルサコフ(4歳下)等とほぼ同年代ですが、いわゆるロシア5人組に入ってはいません。その理由は彼が純然たるプロ作曲家であったこと、及び本質的にドイツ・ロマン派的な手法と教養とを身につけていてローカル臭の強い5人組素人衆とは一線を画すところがあったからだと思われます。このピアノ曲集を弾いてみても、シューマンやメンデルスゾーン(特にシューマン)などのピアニズムからの強い影響が感じられ、例えばムソルグスキーの「展覧会の絵」等の一種野蛮なピアニズムとはずいぶん異なった趣を感じさせてくれます。メロディーなど強いロシア臭がするにもかかわらず、本質的にはヨーロッパ本家の香りがするわけです。
【曲集「四季」について】
ある月刊雑誌の付録のような形で、1年間にわたって毎月1曲づつ連載された結果の曲集です。各々の月にふさわしい題材を選び、ネクラソフ、プーシキン、トルストイ等の短い詩とともに掲載されました。短く軽い曲ばかりですが、好評を博したために後にまとめられて一つの曲集として出版されたようです。チャイコフスキーと云えばバレー、交響曲、協奏曲、等大曲が思い浮かびますが、この曲集に含まれる「舟唄」「トロイカ」等はそれらと並んで有名で、S.ロンバーグの名曲「恋人よ我に帰れ」の一節などは「舟唄」からの流用と云われています。


【無言歌
作品2-3】
1867年の夏、チャイコフスキーはバルト海沿岸のハプサールで、弟らとともに一夏を過ごします。この時の印象を3つのピアノ小品にまとめ「ハプサールの想い出」として出版しました。この3曲目にあたるのがこの無言歌です(城跡、スケルツォ、無言歌、の3曲から成りますが、スケルツォだけは以前の作品を流用したようです)。「無言歌」はアレグレット・テンポの明るい曲想で、楽しい夏であったことが窺えます。
【白鳥の湖より】
●『情景』
チャイコフスキーの代表作、「白鳥の湖」から最初の「情景」のピアノ編曲です。「白鳥の湖」は当初4幕からなるバレー音楽として作曲されましたが、チャイコフスキーの生前何度か上演されたものの、不評で忘れ去られた作品となっていたようです。ただ、チャイコフスキー自身はこの音楽に愛着があり、バレーの中から(順不同に)6曲選んで、演奏会用の組曲としました。「情景」は第1幕に使われる音楽で、城の上空を飛ぶ白鳥の群を描写していますが、オーボエで奏でられるこのテーマは途中、オデット姫の登場とともに何度も現れる、このバレーの中心主題で、哀愁を帯びた如何にもチャイコフスキーらしい美しい旋律です。
《ピアノ編曲について》
オーケストラでは、弦楽器群は多くトレモロで現れますが、これをピアノ上で模すのはなかなか難しく、又、弾くのに大変疲れます。手首は硬くして、肘を細かく振る感じでうまく切り抜けて下さい。
【胡桃割り人形より】
●『花のワルツ』
「胡桃割り人形」は、チャイコフスキー晩年の(死の2年前)傑作で、元来バレー曲として作曲されています。しかし、バレー完成に先立って、この中から何曲かを選び「管弦楽組曲」の形で世に出した為に、実際には初演はバレーではなく、演奏会用組曲の形で行われたものです。従って、演奏の曲順も厳密にはバレーの順序ではなく、「第1組曲」に含まれる8曲は、音楽として鑑賞するように配列してあります。そのせいか、バレーをともなわない演奏会で取り上げられることも多く、チャイコフスキーの代表作として頻繁に演奏を聞く機会があります。
『花のワルツ』は、バレーの大団円で、クリスマスの飾り付けの花たちが踊り出す華やかなワルツです。チャイコフスキーは、ワルツの作曲が得意で、3大バレーのそれぞれに有名なワルツがあり、弦楽セレナーデのワルツも含めて、シュトラウスを凌ぐあでやかなワルツを幾つも作曲しています。
《ピアノ編曲について》
いくつものピアノ編曲がありますが、ここではチャイコフスキー自身のピアノ編曲を元にとりました。他の編曲は、華やかではありますが、かなり演奏が難しく、より弾きやすいものをと考えたからです。オーケストラと比較すると、かなり大胆に音を省略してありますが、そこは作曲者の特権として許されるわけで、腕に自信のある方は、適宜音を付け加えて演奏されるのも良いでしょう。