補遺
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(1)和音の構成 (a)3度構成
このように3度ずつ積み上げた時、一番下になる音を「根音」、下から2番目(つまり根音から数えて3度)を第3音、下から3番目(根音から数えて5度)を第5音、と呼びます。 和音は合計7個まで積み上げることが出来ます。8個目は積もうとしても、根音と同じ音に戻ってしまいます。3個積み上げたものを3和音、4個積み上げたものを4和音・・などと呼びます。4和音、5和音、などと呼ぶ代わりに7の和音、9の和音・・などと言う場合も多いです。これは、根音と積み上げた最上部にある音が、それぞれ7度、9度・・・の間隔になっているからです。
(b)3度以外の構成
しかし、3度和音以外のものについては、そのコード「進行」について一般的に構築された理論体系がなく、多くはその独特の味わいの「響き」を求めて使用されることが多いようです。従って、純粋の4度構成、5度構成和音がコード《進行》の対象として使われることは希です。以下の4度構成和音、5度構成和音とも「進行」はしていないと考えられます。
ただし、次のような3度構成の和音を「擬似的に」4度間隔で配置した「進行」はよく使われます。これは4度構成和音ではなく、3度構成和音の変種で、通常のX→Tへの《進行》です。
(a)転回の意味
(b)転回型の呼び方
(c)数字付き低音
(d)転回型の判断 《ショパン:スケルツォ1番》 (3)コードネームと和音記号 現在、和音を表す方法としてよく使われるのは「コード・ネーム」と「和音記号」です。 (a)コード・ネーム 英語圏の中には「コード・シンボル」と呼ぶ人もありますが、最近はコード・ネームで通用します。基本的な書き方は次の通りです。
ただ、コードネームの書き方は色々な方言があって一定しません。要するに「略号」ですから、分かれば良いのであって、あまり理論的に神経質になる必要はないのです。幾つかその変種を掲げておくと: キャラクタの部分を一括して記号化して表記する場合: この場合、ギリシャ文字の「φ」はハーフ・ディミニッシュつまりm7(b5)の和音を表します。表記がかなりすっきりして見やすいですが、それほど一般的ではありません。和音のキャラクタごとに記号が決まっています。 根音部分を度数のローマ数字で表す場合もあります。これは和音記号の良いところをとったもので、かなり合理的です。例えば、上記の和音が変ロ長調で現れると Um7(b5) と表記します。この方式で書かれてあれば、移調してもわざわざコード・ネームを書き直す必要がありません。又、和音記号のように頻繁に調性を書き換えないでも、コード・ネームのように根音に臨時記号をつけられますのです便利です。例えば、同じ変ロ長調で和音がDbm7(b5)であれば、単に「bVm7(b5)」と書けば良いからです。 この度数を使う形と、和音キャラクタ記号を合わせたものもあります: のような形になります。
(b)和音記号 和音記号も簡略化されたものから、詳しく書くものまでさまざまあって、それに加えコード・ネームと同じくらい「方言」が存在します。だから、基本的には私が本文で使った。簡略化されたものが使いよいと思いますが、詳細なものの一例を掲げておきます。ノクターン嬰ヘ長調の9小節目は、次のようになります:
2つ目の減7の和音が、かなり詳細に書いてあることが分かります。最初の○は減7であることつまり短調に属する和音であることを示す記号、次の2階建てのXのマークは、X度調のXつまり嬰ヘ長調に対しX度上の嬰ハ長調のXの和音であることを示します。次の、9はXの和音が属9であることを示し、1はその第1転回型であることを示します。最後にスラッシュがかかっているのは、「根音」が省略されていることを表します。まとめて云えば: 「属調の短属9の根音省略」 と云うことなのですが、こんな書き方では書く方もしんどいし、読む方もしんどくて余り実用には向きません。本文で使ったように、これをUの変化和音と捉えてU(alt)とする方がかなりすっきりすると思います。なにより、Uと捉えるとY-U-X-Tの4度進行であることが一目瞭然で、少なくとも和声分析には有用な書き方です。
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和音(コード)の《進行》と云うのは、単なる和音の連続とは違った概念です。2音以上が同時に鳴れば《和音》は発生しますが、そのようにして曲中で幾つかの和音が連続しているからと云って、それが《進行》しているかどうかは別の問題です。例えば、次の曲でも《和音》は発生していますが、如何なる意味でも《進行》はしていません。
《進行=progression》と云うのは、ある目的に沿って和音が並ぶことで、そのならびが特定の目的を指し示さない場合は、進行とは呼びません。シェーンベルクはこれを「progression」と「succession」と呼んで区別しています。無論、これは音楽の美しさとはなんの関係もありません、美しい「succession」のパッセージを書く作曲家はいくらでもいます。しかし、よく誤解されがちですが、「succession」にルールは要りません。全く、どの和音をどのようにならべても良いのです。しかし、「progression」にはルールが必要です。聞いている人に、その進行の目的地を知らせなければ、そもそも進行とは呼べないわけで、この目的に向かう「方向」を確定するためにルールが必要なのです。
この目的と云うのは、一般的には「調性」を指します。調性というのは普通「長調」「短調」の事を指します。従って、もっと正確に言うと、目的はその進行がある特定の長短調のトニックを指し示すことです。このような目的に従って和音をならべることを「機能和声」と呼んでいます。機能和声(functional harmony)と云うのはリーマンの造語ですが、彼の研究は主にヨーロッパ音楽のドイツ古典派の音楽を対象として行われましたから、機能和声は調性和声と云っても、ほぼ同義語です。 ところで、次の2種類の和音の連続では、(a)の方ではハ長調を確定させていますが、(b)では何調も確定していません。つまり(b)はハ長調であるかも知れないし、又、ト長調或いはヘ長調であるかも知れないわけで、要するに「調性」を決定していないわけです。
先に述べた言い方をすれば、(a)の和音は《進行》しているけれども、(b)の和音は進行していない、と云うことなのです。
コードの進行状況を明快に解析してくれるのが「根音バス〜fundamental bass」と呼ばれる概念です。考案者であるラモーの時代には、数字付き通奏低音全盛の時代でしたが、この低音は実際に奏される低音を示しており、その上にのる和音を示された実際の低音から数えた度数で指示しています。例えば2個目の和音の意味は、低音シの上に#された6度音(=ソ#)、4度音(=ミ)、3度音(=レ)が堆積されることを意味し、結果コードネームで云うと、E7の第2転回型が指示されると云うことになります。
しかし、この実際の低音(つまり転回型を含む)とは別個に、和音の根音だけを想定したラインを作ると、見かけ上全く異なるように見える和音進行が、同じ物に整然と分類されます。上の例で云えば根音バスのラインは:
のように想定されます。つまり、コード・ネームで云えばC-E7-Am-Dm-C-G7-Cですし、和音記号のように度数読みすると
T-V(alt)-Y-U-T-X-T
です。これは現在私たちが当然のように用いている転回型を使った和声解析の方法ですが、18世紀の前半にはかなり革新的な考え方であった、と云うことです。 とにかく、このようにして想定された根音バスのラインは、例えば次のどの例にも共通に当てはまります。
だから、多くの実際の楽曲のコード進行が「根音バス」と云う概念を用いて、一つの原理的なバス・ラインに帰納されるようになったのです。 根音バス解析の威力は、数字付き通奏低音だけではなく、現在のコード進行解析にも随分役に立っています。(2)で掲げた例: この(a)の形は、ハ長調のカデンツを形成していますが、根音バスで解析すれば
これと全く同じ進行であることが分かります。つまり双方とも、根音バスライン「レ-ソ-ド」の上に形成された進行であると云うわけです。それどころか、相当複雑に修飾された和音進行:
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