ショパンのトリル:幻想即興曲
|
【質問の大意】 ●先ず、ご質問への答えを書きます。 多分、中間部の変ニ長調で現れるトリルの事を指しておられると思います。ここのところは: ●次に、関連する問題について書きます。 (1)ショパンの場合、トリルはどの音から始めるべきか (1)トリルの開始音 現在、一般的にトリルは、楽譜上に示された音から始め、2度上の補助音と交互に奏します(下図、左側)。しかし、バロック期にはトリルは2度上の補助音から弾き始めるのが一般的でした(下図、右側)。 (2)装飾音の出だしのタイミング 上の、変イ長調のノクターンで云いますと、トリルの前の装飾音は、左手と一緒に弾き始めるのか、それとも前へせり出して、左手と合うのはトリル本体の開始音であるのか、が問題となります。これも、バロック式は前者であり、新しい弾き方は後者です。ところで、例に洩れずショパンの場合は殆ど、「バロック式」の装飾音を用いたようです。トリルと同じく、ショパン自身が練習生に注意書きした楽譜では、その事についての書き込みが頻繁にあります。例として、ノクターン
ト短調 作品37-1を掲げます。 ショパンは、ほぼ同年代の、シューマン、リスト、メンデルスゾーン等と、いわゆる「前期ロマン派」と呼ばれる作曲家グループとして数えられます。彼らは、それぞれに作品傾向は異なりますが、四者ともバッハに強い影響を受けて育った人達です。実際、彼らの幼い時代は、殆どバッハは忘れ去られていました。その時代、大バッハと云えば、バッハの息子のCPEバッハであって、セバスチャン・バッハは大バッハの父としてしか知られていたに過ぎません。それにも拘わらず、彼らが四者四様に(リストはベートーヴェンの孫弟子〜つまりツェルニーの弟子ですから、ちょっと異なるかも知れませんが)バッハに大きな影響を受けていたことは、大変興味深い事です。 その中で、ショパンは、辺境育ちと云う特殊な環境が、逆にバロック的バッハ演奏法からの大きな影響と云う結果をもたらし、それがショパン独特の演奏スタイルを生み、引いては作品そのもの(特にノクターンなど装飾豊かな歌謡的楽曲に於いて)に実を結んだと云うことです。 |