楽曲練習の手順
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【はじめに】 [楽譜] 一種類の版しか見ないと、どうしても楽譜が「絶対的」になって、楽譜にかじりついて弾くと云うクセが出来てしまいます。練習の最終目的は、「自分なりの解釈・表現」を確定することですから、これは拙いわけです。1種類しか使わない場合でも、楽譜の編集者に注意を払うクセはつけておきましょう。最近の楽譜は、何を底本にしたとか、どのように編集したとかの説明が付いていることが多いですから、かならず読んで、「批判的に」楽譜を見ることを忘れないで下さい。 出版された楽譜でも、作曲著作権と同じで、ある年月が経つとそれに対する版面権は消失し、コピーも可能になります。クラシック音楽にはそのような楽譜がたくさん存在し(特にペータースやブライトコップフ&ヘルテルなどの古い版)、ネット上で無料で手に入ったりしますから、これらを有効に利用するのも良いと思います。 [参考演奏]
(2)練習の実際
[2-1]譜読み 先ず、「譜読み」と呼んでいる作業から入ります。この目的はつぎの3つです。 ・指使いの確定 慣れてくれば、この3つは殆ど同時に出来て、1〜2回ざっと通して(ゆっくりしたテンポで)弾くことで、この作業を終えることもできます。ただ、初心者の間は、やや時間がかかります。この内容を次に説明します。 この曲を弾くに当たって、私がちょっと引っかかって別の指使いを楽譜に書き込んだのは、2カ所あります: 要するに、指使いは「自分が弾きやすいものが最適の指使い」なので、弾きにくいところがあればどんどん変更して楽譜に書き込みましょう。指使いを自分で考えることは練習の第一歩なのです。ただし、重要な事は、場当たりの運指は避けて、なるべく決まった運指で練習することです。1回毎に指使いが異なれば、なかなか「反復練習」の効果が上がりません。もっとも、もっと上達すればこの程度の曲はどのような指使いでも弾ける訳で、そのような場合に弾く度に異なった指使いになることはあり得ます。ただ、少なくとも「練習中」は「同じ指使い」で反復することが重要です。 《楽譜に記載された指使いについて》
[2-1-2]難しそうな箇所の特定 譜読み段階では「ゆっくり」両手で弾くわけですが、「ン?
ここは危ないぞ」と云った箇所がすぐに分かります。つまり、後で取りだして練習する必要のありそうなパッセージです。そこに、印を付けておきましょう。この曲では、以下の箇所が難しいのではないかと思います。
[2-1-3]段落の確認 演奏するに当たって、最も大事なことは、楽譜に記された音楽を正しい段落区切りで弾くことです。これについても、実際の練習に入ってから説明しますが、譜読みの段階でこの基本的な段落を読みとっておきます。多分、この段階では腑に落ちない部分もたくさん出てくる筈ですが、疑問は疑問として残しておいて、大まかな段落構成は読みとってしまいましょう。この練習曲は小曲ですので、複雑な段落構成は殆どないと思いますが、ソナチネなどは主題がどこで始まりどこで終わるかなど、迷うことも多々あります。フーガなどの多声部楽曲では、ひっくり返ったり拡大されたりした主題を見つけるのも大変です。 難しい箇所に当たったときに、闇雲にハノンなどの指練習に戻る人がいます。弾けないのは、とにかく「指の鍛錬が足らないからである」と云う理屈からでしょうか・・。しかし、それは余りに短絡的な考えで、現在当面しているパッセージの中で、それを克服することで、逆にハノンなどからは得られないテクニックを身につけることが出来ます。指の鍛錬というのは、喩えて云えば、筋力トレーニングのような基礎体力を付けるものであって、筋力トレーニングだけでは野球でもサッカーでもゴルフでも、全然上達しないのと同じ理屈です。 [2-1-2]で示した箇所は、次のようにして練習します: 右手だけを取り出すと、下のような音型です。 これを次のように変形します: ポイントは ●元の音を2音符でしっかり押さえる(小さい音符を弾いている間も離さない) 左手も同様に変形して弾き、出来れば両手を合わせます。わざわざ楽譜に書き出す必要はなく、元の音型を見ながら即席でこの音型を作れますが、一応書き出してみました:
私が実際にこの音型を弾いている動画です: この方法は、@指送りの順序、A鍵盤上の移動幅、を指に覚え込ませる手段としては大変有効で、色々な難しいパッセージに応用出来ます。コツは、元音に当たる音符をアクセントを付けて弾き、かつ次の小音符を反復している間、離さずに保持することです。
[2-3]段落の表現 無理なく続けて弾けるようになれば、これを音楽の文法に従った段落に区切って演奏しなければなりません。この段落については、「レッスンルーム」の「ソナチネの練習方法」に書いていますが、分かりにくい方もおられると考え、角度をを少し変えて書き直してみます。 音楽の演奏を、文章の「朗読」に喩えるのが分かりやすいと思いますので、この比喩を使います。 「今日は、大変良い天気です。」 と云う文章を上手く朗読するには、先ず2種類の要素があります。一つは「発音」です。日本語の50音が正確に発音できることや、吃らずに滑らかに発音出来ること、が先ず第一条件です。演奏の場合はこれが「間違わずに、滑らかに弾ける」に相当します。今までの練習過程はこれを目標にしたわけです。 ところで、滑らかに間違わずに発音するだけでは意味が伝わるとは限りません。 (a)「キョウハヨイタイヘンヨイテンキデス」 全く段落区切りのない、この文では理解するのに少しヒマがかかるでしょう。 (b)「キョウハタ、イヘンヨ、イテン、キデス」 これは文法を無視した段落区切りをしていて、ほぼ理解不可能です。 (c)「キョウハ、タイヘン、ヨイ、テンキデス」 このように文法上正しい区切りをすれば、意味が分かりやすいのです。ただし、区切り方は一通りではありません。人によっては (d)「キョウハ、タイヘンヨイテンキデス」 (e)「キョウハ、タイヘン、ヨイテンキデス」 などの区切り方をする場合もあるでしょう。しかし、どちらにしろ、(a)(b)は×、(c)(d)(e)は○(どれでも構わない)、と云うのが正しい判断であると思います。 音楽も全く同じで、一見すると音符がたくさん連なっているだけに見えても、実は、上のようなひとまとまりの文章が幾つも繋がって全体を構成しているわけです。この文章の段落区切りを間違うと、たとえ各音符が正しく発音されたとしても意味の通じない演奏になってしまいます。文章と同じく、区切り方には個性がありますが、しかし「文法」からはずれた区切り方をしては、意味が通じません。 この事を念頭に置いて、今一度[2-1-3]で示した私の段落区切りを見て下さい。スラッシュが段落を表していて、ちょうど文章の(、)や(。)に相当します。スラッシュが多ければ多いほど「大きい区切り」を表しています。 この段落はピアノ譜の場合スラーで読みとれる場合もありますが、スラーは本来「レガート」を示すもので、レガートではないパッセージにはつけない事の方が多いですから、必ずしも宛になるとは限りません。ネイティヴな言語の場合は子供の頃から培った無意識の文法が備わっていますから、ほぼ無意識に段落を区切れますが、音楽の場合はそうは行きません。常にこのことを意識して、正しい段落区切りで朗読出来ているかどうかを注意する必要があるのです。これは、外国語の会話を習うときに少し事情が似ています。 段落区切りは、朗読の場合と同じく基本的には「間」で表現します。この曲については、私の演奏を参考にして下さい。段落区切りのところで、微妙に「テンポの緩み」と「間」があることが分かると思います。この意味では、機械的なメトロノームに合わせて弾くなどは厳禁です。ハノンなどの基礎トレーニングを除いて、メトロノームは大体の速さを客観的にイメージするためにあるもので、「合わせて弾く」ものなどでは決してありません。
間違えずに発音でき、文法的に正しい区切りをのみこめば、この曲の練習の半分が終了です。後の半分は、文章で云えば「抑揚を付けて」、より正確に、より面白おかしく「朗読」出来るかに充てられます。しかし、この部分はそれこそ「個性」が発揮できて、個人が自由にアイデアを発揮できる場面で、外から色々と指図を受けるものではありません。 しかし、そうは云っても初級の間は様々な表現上のイディオムも手持ちが少なく、アイデアにも限りがあります。ここで、ひとつ、私の参考演奏を取り上げて説明します。
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