装飾記号の弾き方
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装飾記号と云うのは、 装飾音の呼び名については、随分と混乱しており、英、独、仏、伊、日、が入り交じって使われています。全てを掲げるのはかえって混乱しますので、私の判断で最もポピュラーに使われていて通じやすいだろうと思われるものを取捨選択して用いました。
@最初のものを「モルデント」と云います。付された元の音符から始め、2度下の音を素早く引っかけて戻ります。 A後者を転回モルデント(inverted mordent)と云い、2度上の音を素早く引っかけます。書いてある元の音符から始めるか、2度上の音符(上の楽譜のカッコの音符)から始めるか、は時代(作曲者)によって異なります。
毛虫のようなマークが多少長くなると、複(転回)モルデントと云い、引っかける回数を増やします。
前にヒゲをくっつけたような、前打音付き複転回モルデントもあります。
トリルは、元の音と2度上の音とを素早く繰り返しますが、長いものと、短いものがあって、短いものは転回(複)モルデントと同じです。特にバッハは 2度上の音から入る場合と、その音から弾き始める場合とがあるのも、転回モルデントと全く同じです。 名称はトリルで殆ど統一され、日本語で噸音などと呼ぶ人は殆どいません。
書かれた音の上下を縫い取るように奏する装飾音で、縫い取りの方向によってターンと転回ターンがあります。転回ターンの記号については、 ターンは音符の真上にではなく、次の音符との間に書かれることも多く、その場合は「前の音を少し引っ張ってから」音符と音符の間で経過的に装飾します(下の楽譜参照)。
・この部分のMIDI(ベートーヴェン:ロンドハ長調 作品51-1) ターンを書かれた音符から始めるのか、それとも2度上の音から始めるのか、は一定せず演奏者の自由に任されるようです。トリルや転回モルデントほど時代による違いも認められません。 名称はターンと呼ぶ人と、イタリア語でグルペットと呼ぶ人があります。日本語の回音は滅多に使われません。
モルデント、トリル、ターン、などは、いずれも2度上下の音を弾きますが、この「2度」は全音階的2度です。半音階的2度を指示するためには、上下に小さな#やbを書き添えます。
前打音は、主音符の前に小さな音符で示される装飾音ですが、スラッシュのついた「短前打音」と付かない「長前打音」、及び複数個の小音符が主音符の前に配される「複前打音」があります。前打音の呼び方は、伊語のアポジャトゥーラ(appoggiatura)を使いますが、日本語の前打音もよく使いますので、どちらでも通じます。 スラッシュの付いた小音符
●和音に前打音が付いた場合は、次のようになります:
※前打音と、和音が同時に弾き始められる事に注意して下さい。これにアルペジオがかかると:
このようになります。
スラッシュのない小音符、
・この部分のMIDI(アンナマグダレーナ曲集:メヌエットト長調) 長前打音は、和声的な構造を示すには良いのですが、リズム的には視認しにくい欠点があるために、普通の音符に書き直して出版されている場合も多いです。
この例のモーツァルト「トルコ行進曲」も長前打音としては記譜されずに、16分音符に書き直されている楽譜の方が多いかと思います。ただし、どちらで書かれていても弾き方は同じです。
長前打音が複数連なったような見かけですが、小音符の音価には関係なく、「素早く」弾いてしまいます。複前打音の場合、特に、音符がたくさん連なっているときは、前打音の最初を拍の頭に合わせるのか、主音符を拍の頭に合わせるのか、の問題が生じます。
・この部分のMIDI(ハイドン:ピアノソナタ第35番 第2楽章)〜前打音の開始を拍の頭 基本的には、バロックでは前打音の最初を拍の頭に合わせます。その後は、主音符を拍の頭に合わせる習慣に変化していったようですが、明確なルールは存在しません。特に、ハイドンやモーツァルトなどピアノ初期の作曲家では、両様に弾かれているようです。
前打音とは反対に、主音符の後につく小音符です。典型的なものは:
のようにトリルの後につくものです。弾くタイミングが、前の音を削ってそこに割り込みます。2個以上小音符のあるものを前打音と同じように、複後打音といいます。ただ、弾くタイミングの問題だけで、前打音との区別がはっきりしません。特に、前打音を拍の前に放り出して、主音符を拍の頭に合わせるような弾き方では、どちらとも云えるわけで、トリルの尻尾の飾りを除けば、あまり使われないようです。
(a)モルデント
・バッハ:インヴェンション 変ホ長調 (b)2度上から入る転回モルデント
(c)主音符から入る転回モルデント
(d)モルデント、転回モルデント、前打音付きモルデント、などの組み合わせ
(e)トリル
モーツァルト:ソナチネ K545 第1楽章 ちなみに(a)は私の弾き方、(b)(c)はソナチネ・アルバムに載っている参考例。
(f)ターン
※
(g)和音に付いた前打音
(j)長前打音、モルデントの組み合わせ
※2小節目の長前打音は、音価いっぱい4分音符分伸ばしても構わない。
(h)前打音、後打音の入り交じった装飾
※ショパンの前打音は、バロックのようなタイミング(装飾音の最初を拍の頭に合わせる)で弾きます。 ※トリルもバロックのように、2度上から弾き始めます。
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