ペダリングの基本

【はじめに】
《ペダリングは、演奏に味付けをする際に最も基本となるテクニックです。ただ、これを修得するためには、音楽的な「良い趣味を育む」と云った通常の練習の他に、ピアノという楽器の基本的な仕組みを知る事が必要になります。何故なら、《ペダル》は、グランド・ピアノ、アップライト・ピアノ、電子ピアノ、ではその性能に全く異なったところがあり、その仕組みを良く知らないで練習を重ねても、なかなか満足の行く結果は得られないからです。従って、今回の内容は、この《ピアノの仕組みの基本知識》と抱き合わせ、と云うことになります。

 

(1)ダンパーペダル

ピアノには、普通2本又は3本のペダルが装備されていますが、一番右端のペダルをこのように呼んでいます。その他、「サスティン・ペダル」とか「ラウド・ペダル」等の呼び方もあります。これを踏むと、ピアノの「ダンパー」全体が持ち上がるわけです。ただ、このように説明しても、何のことかよく分からない方が多いと思いますので、ここで、ダンパーの役目を理解するためにピアノが発音する基本的な仕組みを簡単に説明します。

[1-1]ピアノが発音する仕組み

次の図は、ピアノの横型アクション(グランド・ピアノ)を模式的に描いたものです。縦型アクション(アップライト・ピアノ)は垂直方向の鍵盤の動きを、水平方向のハンマーの動きに変えるため、多少複雑な構造をしており、理解しやすいように横型のアクションを模式化しましたが、原理は縦横どちらでも同じです。

@無音状態の図です。ハンマーは弦に触れずに静止し、弦にはダンパーと呼ばれる、フェルトを貼った木片が密着しており、弦の振動を禁止しています。 A鍵盤が底まで押し下げられ、コツンとした手応えがあります。鍵盤の先に繋がったダンパーは持ち上げられ、弦の振動を許す態勢に入ります。ハンマーも持ち上げられますが、まだ弦には距離があり音は鳴りません。
B鍵盤が充分強く叩かれた場合は、勢いでハンマーが鍵盤を離れて飛び上がり、弦を打ちます。ここで音が鳴ります。 C打弦後、ハンマーは跳ね返ってすぐに元の位置に戻りますが、鍵盤は押し下げられたままですので、ダンパーは上がったままです。従って、弦は自由に振動しつづけます。
D鍵盤から指を離し、元の位置に戻すと、ダンパーが弦に密着し振動を止めます。ここで、音が《途切れる》事になります。 上記の動きを、連続画にまとめました。図にマウスを乗せると動作します。確認して下さい。

 (打鍵に従ってダンパーが上がり、鍵盤を離すとダンパーが下がって消音する様子の実写)
※写真はサイズの関係で、グランドピアノの内部をカメラを横にして撮っています。90度回して考えて下さい。

《電子ピアノの場合》
上掲図は、グランド・ピアノの場合を模していますがアップライト・ピアノでも大きな違いはありません。しかし、電子ピアノはかなり様子が異なってくるので、ここで若干の補足をします。
電子ピアノにはダンパーもハンマーもありません。もともと《弦》が張っていない訳ですから、必要ないわけです。ただ、巧妙な仕掛けで、ハンマーで弦を叩き、ダンパーでその振動を止める、と云ったアコースティック・ピアノ的な感覚を模写するように作られています。この模写の対象となるのは、高級なコンサート・タイプのグランド・ピアノですから、高級品の電子ピアノになりますと、弾いた感覚はコンサート・グランドに近い感じがします。とくに、アップライト・ピアノにはない、左ペダル(ソフト・ペダル)の効果を持つのは電子ピアノの魅力です(ただし、それは一部高級品に限られますが・・)。
しかし、逆に、ハンマーを持たない分、上掲図Bのシーンでの動作を割愛している場合が多く、電子ピアノ独特のクセを持つことがあります。つまり、アコースティック・ピアノでは、《充分強く打鍵しなかった場合》は、ハンマーが充分な初速を得られず、《音が鳴らない》ことが往々にしてあります。それに対し、電子ピアノの多くは、非常に弱く打鍵しても音が鳴るように調整してあり、《音が抜ける》ことは殆どありません。その分弾きやすいと云えば弾きやすいですが、このクセに馴染んでしまうとアコースティック・ピアノに向かったときに、音が抜けて困ると云った事態になりやすいのです。時々、アコースティック・ピアノの重いタッチで練習しないと《指の力がつかない》と考える人がいますが、多分、それは指の力がつかないのではなく(電子ピアノの物理的タッチは充分重いです)、このような独特のクセに馴染んでしまう結果だと思います。

 

[1-2]ピアノ発音の特徴とダンパーの役割

上の図Bから分かるように、ピアノの場合打弦の瞬間には《既に鍵盤とハンマーは繋がってはいません》。ハンマーは、それまでに与えられた速度によって惰性で弦にぶつかってはねかえるだけなのです。コツンとした鍵盤の手応えは、鍵盤が底板に当たる感触で、実際に打弦した手応えではありません。この事は、もし同じ速度をハンマーに与えられるのであれば、《鍵盤を指で弾こうが金槌で叩こうが結果は同じ》と云うことを示しています。つまり、金槌で叩けば固い音がし、名人の指で弾けば柔らかい音がする、などと云うことはあり得ません。
このように、ピアノでは、発音の前に発音機構が演奏者のコントロールから外れ、いわば「惰性系」の中で鳴る訳で、一旦発音してしまえば、その後演奏者に出来ることと云えば、(鍵盤を戻すことによって)ダンパーを弦に接触させ音を止めることくらいしかありません。シューマンの次の奇妙な譜例は、この唯一可能な方策を使って、何とか発音中のピアノの音を演奏者がコントロールしたいと云う姿勢が見て取れます(「蝶々」作品2の終わり)。

[1-3]ダンパー・ペダルの効果

さて、鍵盤に連動するダンパーの役割は、弦に接触して《音を止める》ことですが、これが《ペダル》に連動すると、全く異なった演奏効果を発揮することが出来ます。ダンパーは基本的に1鍵盤に対し1個づつ装備されていますが(高音部の一部はダンパーがありません)、ダンパー・ペダルを踏むと、これらの数10個のダンパーが一度に持ち上げられます。図解すると次のような感じです。

@ペダルを踏まない状態では、ダンパーは弦に密着しています。 Aペダルを踏むと、ダンパーが離れます。

ペダルを踏むと、全ダンパーが上がり、鍵盤を押さなくても《全ての弦が自由に振動出来る》態勢に入ります。この状態で打鍵すると、次の二つの効果が得られます。

@実際に弾かれた音以外の弦が共鳴を起こし、元の音色にそれらの共鳴音をプラスする。
A鍵盤を離しても、音が途切れない。

DOUGASAISEI.JPG - 1,068BYTES ペダルを踏みっぱなして打鍵している、ダンパーは上がったまま。

@1音の打鍵では、これに対応するダンパーが持ち上がり、その弦だけが振動しますが、ペダルを踏んで全ダンパーを持ち上げることにより、打弦された音と倍音関係にある全ての弦が共鳴振動を始めます。これは「ウァーン」と云うような共鳴音で、かなりの音量があります。この仕掛けは、打鍵後のピアノの音色をコントロールする重要な要素で、ロマン派以降のピアノ音楽は、この効果抜きでは成り立ちません。特に、発音直前に演奏者のコントロール下から離れるピアノと云う楽器に於いて、発音後に音色をコントロール出来る唯一の手段なのです。なお、この状態では他の弦の《共鳴音が加わる》為に、音がその分大きくなります。英語で、このペダルのことを「ラウド・ペダル」と呼ぶことがあるのは、その意味です。この例として、ショパン作曲練習曲作品25-1を掲げます。耳で、これを確かめて下さい。ペダルを踏む毎に共鳴音が雲のようにわき上がり、その中から旋律が浮き上がると云う、見事な効果です。コルトーが誤ってこの曲を「エオリアン・ハープ(風鐸の一種)」と呼んでしまったのも分かる気がします。


《電子ピアノの場合》
高級機種になると、この《共鳴効果》をシミュレートしているものもありますが、まだ不十分でアコースティック・ピアノのような感じにはほど遠いです。普及機種ではこの効果は無視され、次の伸音効果(サスティン効果)のみに限ってあることが殆どです。電子ピアノは、ことペダリングに関しては、中途半端な効果しかもっていないと云っても良いでしょう。しかし、その分、少々雑なペダリングでも音が濁りにくいと云う、怪我の功名的効果があって、弾きやすいと云えば弾きやすいです。なお、バッハなどペダリングが重要な役割を担っていないジャンルを演奏するには、何の問題もありません。


Aの効果は、ピアノの可能性を大きく広げます。何故なら、これを利用することで指が届く以上の広い幅の押鍵と、両手の指の本数以上の発音(押鍵)が可能になるわけで、オーケストラのような広い音域と音数を奏する事が出来るようになるからです。この例として、ラフマニノフ作曲《前奏曲 嬰ハ短調 作品3-2》を示します(ライブラリ8)。この、ピアノ・ソロとも思えないような4段楽譜(これは連弾楽譜ではありません)のパッセージは、ペダルなしでは全く考えられないものです。

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[1-4]ダンパー・ペダルの踏み方

[1-4-1]踏み替えのタイミング

ダンパー・ペダルは打鍵よりも《少し遅らせて》踏むのが原則です。効果が良く聞き分けられるようにピアノの低音弦で試してみましょう。

(a)踏みっぱなしで、前の音が残り特殊な効果です。
(b)打鍵と同時に踏み替えると、音が途切れたり、前の音が残ったりします。
(c)踏み替えのタイミングが遅すぎると、前の音が長い時間残り、濁った感じがします。
(d)このように、打鍵直後に踏み込むのがベストです。

 (a)特殊な効果を狙う以外は普通このようには踏みません。
 (b)同時と云うのはタイミングが難しく、往々にしてこのようになってしまいます。
 (c)踏み替えるタイミングが遅すぎます。
 (d)このくらいの感じです。

《踏み替えタイミングの練習》
左側の楽譜を弾いて下さい。ペダルを使って、結果的には右側の楽譜に聞こえるようにします。コツは、ペダルの踏み替えタイミングです。早すぎれば音が切れてしまいます、遅すぎれば前の音が残って濁ります。ほんの少し遅らせて「打鍵直後」に踏み替えるのがコツです。片手ずつの方がやさしいので、はじめは片手ずつでも構いません。但し、出来上がれば、必ず、両手合わせても練習して下さい。

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BUTTN_GAKUFU.GIF

 (打鍵と、ダンパーの上がるタイミングを確認して下さい)

[1-4-2]ハーフ・ペダル

ピアノの低音弦は、太く質量も大きいので、ダンパーを軽く触れただけでは振動は止まりません。逆に高音は、ダンパーが軽く一瞬触れるだけでも音を止めることが出来ます。この特性を利用したものが《ハーフ・ペダル》と呼ばれる踏み方です。


このパッセージ(ドビュッシー:前奏曲集第1巻より「沈める寺」)では、上部の和音が濁らないように、楽譜に書いた記号のように、こまめにペダルを踏み替えます。この時、踏み替えを《軽くダンパーが弦に触れるだけ》にとどめると、頭で叩かれる最低音のCは切れることなく4小節間鳴り続けます。ただし、このテクニックはピアノの個体差による反応の違いが大きく、どのくらいの《踏みしろ》で音が切れるか切れないか、そのピアノによく馴染んでおかなければなりません。

《ハーフ・ペダルの指示》
ハーフペダルに関しては、特別に指示する記号があるわけはありません。普通のダンパーペダルの記号がついているだけです。従って、演奏者が自ら判断する必要があります。大体において、とても指では押鍵を続けられない、長い低音が存在する事が目安です。例えば:

CLAIR_DE_LUNE.JPG
このような低音の付点2分音符に注目して、丸印のペダルはハーフペダルになることを、演奏者が判断するわけです(曲はドビュッシー「月の光」ライブラリ5掲載)。ハーフペダルは、低音に対して効く特性であることを忘れないで下さい。

《電子ピアノの場合》
電子ピアノでは、この「ハーフペダル」は効きません。機種によっては、ペダルの踏みしろが変わると反応が異なるものもありますが、その場合でも「伸音時間」が変化する(浅い踏みしろの方が短い)だけで、アコースティックピアノのハーフペダルとは全く異なります。

[1-4-3]特殊なペダル操作

次の動画を見て下さい。一見、必要もないのにペダルを細かく踏んでいます。

DOUGASAISEI.JPG - 1,068BYTES 曲はベートーヴェン悲愴ソナタ冒頭

これは、ff 和音によって生じた余分な共鳴音を取り除いているためで、放っておくと大きな共鳴音が持続してしまうのを防いでいます。いわば、decresc. を早める効果で、ピアノの個体差(や部屋の共鳴具合)によって、用いいなければなりません。ペダルを戻してダンパーを接触させますと、共鳴音は止まりますが、押鍵中のダンパーは下がりませんから、楽譜上の音は続いている訳で、次に踏み込むと、再び共鳴が始まります。しかし、この共鳴は先ほどよりは弱いわけで、これを繰り返すとある程度響きをコントロールする事が可能です。このように、ペダルは、ただ踏めばよいものではなく、踏んだ結果を常に耳で聴き、常時アジャストするものなのです。アコースティックのピアノに馴染んだ人の多くは、こうして細かくペダルを踏むことによって響きをアジャストするクセがついているもので、それが美しいサウンドを出せるかどうかにもかなり関連してきます。

《電子ピアノの場合》
電子ピアノでは、本当の意味での「他弦の共鳴」はありませんから、このテクニックは全く無関係です。逆に言えば、誰が弾いても一定のサウンドが出せる、と云うことで、それが電子ピアノの長所でもあり短所でもあります。

 

(2)ソフト・ペダル

[2-1]ソフト・ペダルの仕組みと効果

左側のペダルをソフト・ペダルと呼びます。基本的に、ピアノの弦は1音に付き3本あり(音域によっては2本の場合も1本の場合もありますが)、これらをユニゾンに調弦してあります(ホンキー・トンクの場合はこの調弦がズレているわけです)。これを同時にハンマーで叩いている訳ですが、このソフト・ペダルを踏むとアクション全体が若干横にずれ、2本乃至1本しか叩かなくなります。これによって、《音質がかなり変化し》、きらびやかさが減り落ち着いた音調になります。丁度弱音器(ソルディーノ)の効果ですので、これをソルディーノ・ペダルと呼ぶこともあります。ただし、弱い音だけで使うものではなく、ffでも使用します。
楽譜には、una corda(ウナコルダ、つまり1本の弦)、tre corde(トゥレコルデ、つまり3本の弦)と書いて指示します。又、他の楽器のように、con sordino(弱音器付で)、senza sordino(弱音器なしで)、と書かれる場合もあります。この仕掛けは、基本的には横型アクションのグランド・ピアノにしかなく、アップライト・ピアノはこの「ウナ・コルダ効果」を持っていません。アップライト・ピアノは、ハンマーと弦の距離を少し近づけることで、同じ力で弾いても弱い打鍵になるような工夫がされており、「弱音効果」と云う意味では機能しますが、グランド・ピアノのように、ウナ・コルダ特有の音色に変化する訳ではありません。

DOUGASAISEI.JPG - 1,068BYTES グランド・ピアノのソフトペダルを踏んだり離したりしています。踏むと鍵盤が全体に右にずれるのが分かると思います。

[2-2]ソフト・ペダルの踏み方

このペダルの使用は、必ずしも楽譜に明示されているとは限りません。。実際、ショパンはこのペダルをかなり頻繁に用いて演奏したと伝えられていますが、現在楽譜に残っているのは作品15-2の嬰ヘ長調のノクターン(ライブラリ4)だけです。つまり、左ペダルの使用は、多く演奏者の判断に任せられていると云うことなのです。
又、ピアノが現在の形に落ち着いたのは比較的最近で(19世紀前半)、それ以前にはペダルに関して色々な変わった工夫が凝らされたピアノが存在した、と思われる事情があります。この事は、特にベートーヴェンのピアノ作品を弾くときに注意が必要です。「月光の曲」の冒頭には「senza sordino」が見えますが、恐らくこれは、現在の「ソルディーノ・ペダルなしで」と云う意味ではありませんし、28番のソナタには「poco a poco tutte le corde」(una corda から徐々に tre corde に戻す?)のような、現在のピアノでは理解しにくい指示があります(29番〜ハンマークラヴィア〜にも同様の指示が見られます)。つまり、ベートーヴェンの使っていたピアノは、現在私たちが使っているピアノとは、ペダルに関して、その構造が異なっていた、と考えるべきなのです。要するに、このペダルは演奏者が自分のイメージで使用することが大事で、うまく使えば絶妙な効果が得られますが、イメージがないまま無闇に踏んでも必ずしも効果が上がるとは限らないと言えるでしょう。

《電子ピアノの場合》
アップライトピアノと異なって、電子ピアノはソフトペダルが《音色の変化を伴う》ことが多いです。しかし、それがグランドピアノのような音色変化であるかどうかは、別問題です。一部高級機種では、実際にソフトペダルを踏んだ音色をサンプリングして使用していますので、グランドピアノと同じような音色変化が得られますが、多くは電子的に柔らかくしただけの音色で、完全に満足の行くものではありません。しかし、少なくとも音色変化があると云う点では、アップライトピアノより優れていると思います。

 

(3)真ん中のペダル〜ソステヌート・ペダル

ペダルを3本装備しているピアノで、真ん中のペダルは「ソステヌート・ペダル」と呼ばれることがあります。但し、3本装備しているピアノでも、アップライトピアノでは、これが練習用の「消音ペダル」になっていることもあり、正式の「ソステヌート・ペダル」を備えているのピアノは少数派です。このペダルは、ダンパー・ペダルの変種で、押鍵中のダンパーのみを、鍵盤を離しても戻らなくする機能を持ち、特殊な効果に用います。

例えば、真ん中のC音を押さえ、ソステヌートペダルを踏み、あらためてパッセージを弾くと、ペダルを踏んだC音のダンパーが持ち上がったままで、その音だけが消えずに残ると云う効果です。

ただ、このペダルの使用が楽譜上に指示されている曲はごく希で、少なくともショパンやリストなどの良く知られたピアノ曲には一つもありません。私の手元にある楽譜で、これが指示してあるのは、P.グレィンジャー編曲のラフマニノフの第2協奏曲のソロ版(下参照)ひとつだけです。それによりますと、演奏前に予めいくつかの音を押鍵し、このペダルを踏んでおきます。そのまま普通に右ペダルを使って弾き始めますが、ソステヌート・ペダルを踏んだ音は、右ペダルを戻しても音が切れませんので、丁度ハーフ・ペダルを使った演奏のように、和音を濁らせずに大事な音だけを残す、と云った効果が得られる訳です。しかし、いずれにしても、このペダルは一般には認知されておらず、「特殊なペダル」として考えて構わないと思います。

ONSEISAISEI.JPG(良く聴いて頂ければ、ハーフペダル使用の場合よりもかなりくっきりと低音が残っているのが分かると思います)。

《電子ピアノの場合》
電子ピアノは、何故かこのペダルを装備している機種が多く、このペダルを器用に使って弾く人もあります。ただ、このペダルもダンパーペダルの一種であることには変わりなく、ダンパーペダルの項で書いたと同じ事が云えます。つまり、「伸音効果」はあっても「共鳴」効果はない、と云うことです。これが装備されたグランドピアノでは、たとえソステヌートペダルをあてがった音を弾かなくても、その音のダンパーが上がっているために、他の音を弾くとその音が共鳴して鳴り始めますが、電子ピアノのソステヌートペダルではこの効果はありません。

 

(4)補遺〜各種ピアノによるペダル効果の違い

最後に、グランド・ピアノ、アップライト・ピアノ、電子ピアノ、の3者に関して「ペダリング」の効果を比較しておきます。お使いのピアノの種類に応じて、それぞれの内容を確認して下さい。

 

ピアノの種別 

ダンパー・ペダル(右ペダル) 

ソフト・ペダル(左ペダル) 

ソステヌート・ペダル(真ん中ペダル) 

伸音効果 

共鳴効果 

ウナ・コルダ効果 

伸音効果 

共鳴効果 

グランド・ピアノ 

○ 

○ 

○ 

○(非装備もあり) 

○(非装備もあり) 

アップライト・ピアノ 

○ 

○ 

× 

× 

× 

電子ピアノ 

○ 

△ 

△ 

○ 

× 


※電子ピアノの△印は、機種によって疑似効果をシミュレートしている場合もあることを示します。