ピアノのタッチ解説
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【はじめに>】 このために、ピアノの練習〜殊にテクニックの練習〜は、ともすれば音色を無視した「指の鍛錬」と云った、メカニカルなトレーニングに偏りがちで、極端に云えば、指さえ鍛錬しておけば何でも弾ける、或いは、逆に「上手に弾けないのは、一にも二にも指の鍛錬不足」といった考えを持っている方は意外に多いのです。しかし、それは極端な考えに過ぎます。腕前と音色が無関係なのは、あくまで《一つの音》に着目した場合で、実際の音楽の中で、複数の音が継起的(或いは同時的)に出現する場合、やはり《音色の美しさ》に類した要素があり得ます。つまり、厳密には《美しい音色》とは云えないまでも、《美しい音楽》を奏でる源として、やはりテクニックはあり得るのです。 この事を念頭に置いて、ここでは、その「指のメカニカルな鍛錬」を越えた部分のテクニックと(つまり、美しい音を奏でるための技術)、その練習方法を解説します。出来るだけ、実際の音楽に即してと云う観点から、音楽素材は出来るだけサイト内に掲載してあるものを使用しています。必要に応じて、楽譜を印刷するなり、曲を試聴するなりの利用をお奨めします。 |
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[1]タッチの種類 実際に鍵盤に触れる部分は指先だけですが、力の入れ方によって、ピアノのタッチは4種類あると思われます。はじめに、これを簡単に説明します。詳細は後に吟味する事にします。 ●指のタッチ 指だけのタッチで弾く例(「アラベスク(右手)」〜ブルグミュラー:”25のやさしい練習曲”ライブラリ2掲載) 《離すタッチ》 ●手首のタッチ 手首のタッチで弾く例(「帰途(両手)」〜ブルグミュラー:”25のやさしい練習曲”ライブラリ2掲載)
そのほか、鋭いアクセントをランダムに付けたい時に手首のタッチは重宝します。ジャズピアノなどではよく使われるテクニックです。次の譜例は、典型的なブルース・パッセージ(右手)ですが、アクセントの部分は手首のタッチを用いて弾きます。
コツは、指を固くした状態で、手首から先を振ります。腕は動きません。手首が固いと、一緒に腕も振ってしまい音量のコントロールが難しくなり(pp の連続などとても弾けない)、良い結果が得られません。 ●腕のタッチ
●力を抜くタッチ(肘のタッチ)
管楽器だと一息で、弦楽器だと一弓で、奏される訳でB音にはアタック音がありません。しかし、ピアノではそのような意味でのレガート奏は不可能で、Aの音もBの音も、コツンと云う同じようなアタック音が聞こえてしまいます。そこで、通常は、音Bを音Aより弱く弾くことによって表現する訳です。しかし、この強弱関係は大変微妙で、「指のタッチ」での「力の入れ具合」だけで表現することは至難の技です。「肘のタッチ」はこのような時に役に立ちます。つまり、音Bを弾くときに、「肘」を僅かに「持ち上げる」ような感じで、「力を逃がして」やるわけです。肘はこの時ショック・アブソーバのような役目を果たし、「指だけの力加減」よりも、もっと容易に微妙な強弱を実現することが出来ます。この事から、このタッチを「脱力」と表現する人もありますが、言い方は変わっても同じ事です。 これは、音が3音以上続いても同じ事で、スラーのかかった最後の音に対し、「肘のタッチ」を使い、《音を抜きます》。又、このタッチは和音奏の場合の強弱表現に大変重要な役目を果たします。
[2]それぞれのタッチの詳細 ●指のタッチ @正常テンポで演奏したものを横から見る 《説明》 A正常テンポで演奏したものを真上から見る 《説明》 ●手首のタッチ @ゆっくり弾いた例を横から見る 《説明》
●肘のタッチ
要するに、このパッセージは
@良い例(但し、ちょっと大袈裟・・) 《説明》 又、この譜例に限らず、例えば指のタッチでの曲例(アラベスク)で16分音符のパッセージを弾き終わった直後、右手が鍵盤から跳ね上がるように見えるのも、やはり同じように《肘のタッチ》を使って、最後の16分音符をうまくまとめようとしている結果です。もう一度映像を確認して下さい。 この「肘のタッチ」は形から覚えても、なかなかに修得が難しいものです。肘から腕にかけての、微妙な筋肉の内部感覚を会得する必要があります。上級者になっても、人によっては大袈裟に肘を振る人や、ちょっと手首を持ち上げるだけの人や、全く様々で、形にとらわれる必要はありません。しかし、ピアノに限らず楽器(オルガンだけは例外のような気がしますが)の演奏には、かなりの程度《体全体の動き》が重要です。一見、不必要に思われる《体の動き》も、演奏者が自分で会得した《筋肉の微妙な内部感覚》を実現するためのトリガーであることが多いのです。だから、大事なことは、ピアノ演奏時に、思い切って色々な体の動きを試してみることです。きっと、ご自分の演奏スタイル(体の動き)が見つかると思います。
[3]肘のタッチの練習 肘のタッチは、なかなかに会得するのが難しく、これを助けるために練習曲を作ってみました。曲はシューベルトの子守唄を簡略化してあります(小さい音符が元のメロディ)。スラーの最後の音(はじめの3小節は赤で囲みました)を注意深く弾いて下さい。音符を拾うだけならとても簡単ですが、もう一歩踏み込んで、《肘のタッチ》を使いましょう。上体と肘を(ヴァイオリン奏者のように)動かして、キメ細かいタッチを試みて下さい。気分を出すために、準備してあるカラオケに合わせるのが良いでしょう。指の力加減だけに頼っていれば、安定してスラーを表現することは出来ません。予想より音が大きく出すぎたり、又、(特にアコースティック・ピアノの場合)弱すぎて鳴らなかったり、と不安定な状態が続く筈です。何度か弾いて、「肘のタッチ」を会得すれば、非常に安定して弾けるようになります。「ああ、この感じか!」と納得出来るまで、これを弾いてみて下さい。
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